36話 ページ37
Anijya side
____ああ、何を言ってるのか分からない。
ボヤける視界に映るA。それが次の瞬間には俺の横をすり抜けて行った。
止めようとしたがそれは叶わず浮いた手が空を切って重力に沿うように下に落ちる。
ダメだ、体が動かねぇ…
そのまま暗闇に引きずり込まれるように意識を手放した。
___誰かに必要とされたかった。
兄なんだから出来て当然だ。
お兄ちゃんなんだから譲ってあげなさい。
いつだってそうだ。
俺は何をするにも下を優先しなければならない。頑張ったって褒められるのは弟だけだ。
俺は出来て当たり前。
違う、違うんだ。出来て当たり前だなんて言わないでくれよ、俺だって出来ないことは沢山ある、努力だってしたさ。
だから俺だけを見て…、俺を必要としてくれ。
弟や他の人間じゃなくて、俺だけに、
俺は、
『目が覚めましたか？』
冷たい感触に意識が浮上し、重たい瞼を持ち上げると俺の顔を覗き込むAがいた。
俺、どうしたんだっけ…
記憶がどうもあやふやだ。
飯を食べたところまでは覚えている。だけどそのあとの記憶がすっぽりと切り取られているように思い出せない。
『兄者さん、兄者さんを理解してくれる人はきっと沢山います。だから自分を追い込まないでください』
そう悲しそうに言ったAにハテナが飛び交う。なんで急にそんなことを…？
もしかしてこのなくなった記憶の中で自分が何か言ったんじゃ、
だけど予想は外れていたらしく、
『魘されてましたよ。認めて欲しかったんですよね、自分だけ見て欲しかったんですよね。今だけは、私が兄者さんの事だけ見てます。他の誰でもない、私が』
なんでか、その言葉一つで安心してしまう自分がいて、腕で自分の目を覆う。
そうすれば本音がボロボロと口から出てきた。
「……俺だってな、こんな我儘言いたくねぇよ」
『はい』
「だけど仕方ねぇじゃん…、俺は兄で弟より出来なきゃダメなんだよ。俺だけ理解してくれてたはずなんだ、母さんも親父も…。なのに、気づいたら誰も俺を見てなんかなかった。誰も俺なんか必要としてなかったんだ」
『それは違います』
あ？思わずそう答えそうになって慌てて止める。腕との間に出来た隙間から見えたのはAの悲しそうに微笑む顔。
『寝ましょう。下がる熱も下がりませんから…』
ひんやりとした手が目元に落とされ、また睡魔が俺を襲った。
人は誰しも誰かを必要とし、必要とされるものだ。
こいつに必要とされた人間はどれくらいいるんだろうか。
あわよくば、その中に俺がいればいいなんて__
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北海ユキノコ(プロフ) - 続きを楽しみに待ってます！頑張って下さい！応援してます！ (2023年2月20日 17時) (
レス) id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
北海ユキノコ(プロフ) - いつも、ワクワクしながら読んでます！ (2023年2月20日 17時) (レス) @page41 id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - ばおばぶさん» コメントありがとうございます…！何度も…！！本当にありがとうございます。これから登場人物も増えていく予定ですので、お楽しみくださいませ！！ (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - konbu_3723さん» コメントありがとうございます…！とても嬉しいです…、リアルの方でバタついていたのもありそのお言葉で涙が出てしまいました。更新頑張ります。暑い日が続いてます。konbuさんもどうかお体に気をつけてください。 (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
ばおばぶ(プロフ) - 御三方にハマってから占ツクでこちらのお話を見つけて実は何度も見に来ていたので更新とても嬉しいです！！今後の展開も楽しみです(*´﹀`*) (2022年3月26日 2時) (レス) @page38 id: 656b6dd078 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：。 | 作者ホームページ：http:/http://commu.nosv.org/p/tensan819
作成日時：2019年3月7日 18時
