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4話 ページ4

「抵抗しないの?」
『もう、いいかなって』
「…どういう、」


私は壁に刺さっていた刃を強く握った。
ナイフなんていらない。抵抗なんてしなくていい。ただ、これを自分の喉に当てれば___

ぼたぼたと血が地面に滴った。
痛みはあるが、アドレナリンのおかげがそれほど苦痛ではない。
むしろ自由になれると思ったら、こんな痛み全然耐えられる。



『これで、やっと死ねる…。やっと自由になれる』



彼が動揺したのが刃から伝わってきた。
私はゆっくりと壁に背をつけ立ち上がり、握っていた刃を壁から抜き取る。
刀を握る彼がその反動で体制を崩したすきに、私は刃を自身の首に当て、一気に引こうと力を入れた。


だけど、それは既のところで邪魔されてしまう。


私の横に付いた手と、耳元にある彼の顔。


刀は遠くの床に落ちていた。彼が刀を投げ捨てたらしい。
その拍子にバランスを崩して私に寄りかかったのだと、残念に思う脳が正常に処理した。


「何してんの、このおばか!」


そのあまりに悲しそうな声に、ふと疑問に思ったことを口にした。


『私を、殺すんじゃなかったんですか』
「本気でそう言ったと思う?全く、今どきの高校生ってのは冗談が通じないわけ?」


ゆっくりと吐き出されたため息が耳に当たって擽ったい。
身を捩るように横にずれると、彼は壁におでこを付けて横目で私を見た。


「最初に言った通り僕は警告をしに来ただけ。もしここに本当に薬があるなら僕がそれを回収すれば、君には被害が及ばなくなると思ったんだ…。君はただ巻き込まれてしまっただけだからね。だけど思ったより状況は深刻なのよ」
『どうしてですか』


ずるずると地面にしゃがみこんでしまった彼。
その顔は疲労が滲み出ていた。


「その兄弟、君を狙う理由は薬だと言ったけど、もう一つあるんだ」
『もう一つ…?』
「君のお父さんが所属してた組織は薬を悪用しててね、ある日薬の副作用か彼の部下がある一家を惨殺してしまった。しかし見つかったのは夫婦と思われる男女の遺体だけ。でも、捜査を進めるうちに彼らには2人の子供がいたと判明した」


まさか、と思った。
彼はエメラルドのような瞳を揺らして、私を見た。


「そう。見つからなかった遺体は恐らくその兄弟。もう何年も前の話だから、とっくに時効で捜査は打ち切りにされている。けど兄弟はずっと探してたんだ、両親を殺した組織と薬を。上司であり運び屋だった君の父親、そしてその娘である君は兄弟にとったら仇も同然だ」

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北海ユキノコ(プロフ) - 続きを楽しみに待ってます!頑張って下さい!応援してます! (2023年2月20日 17時) (レス) id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
北海ユキノコ(プロフ) - いつも、ワクワクしながら読んでます! (2023年2月20日 17時) (レス) @page41 id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ばおばぶさん» コメントありがとうございます…!何度も…!!本当にありがとうございます。これから登場人物も増えていく予定ですので、お楽しみくださいませ!! (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - konbu_3723さん» コメントありがとうございます…!とても嬉しいです…、リアルの方でバタついていたのもありそのお言葉で涙が出てしまいました。更新頑張ります。暑い日が続いてます。konbuさんもどうかお体に気をつけてください。 (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
ばおばぶ(プロフ) - 御三方にハマってから占ツクでこちらのお話を見つけて実は何度も見に来ていたので更新とても嬉しいです!!今後の展開も楽しみです(*´﹀`*) (2022年3月26日 2時) (レス) @page38 id: 656b6dd078 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:http:/http://commu.nosv.org/p/tensan819  
作成日時:2019年3月7日 18時

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