29話 ページ30
Otuiti side
力なく俺に寄りかかったAちゃんを慌てて抱きとめる。おでこに手を当てるとやっぱり熱くて、荒い呼吸にAちゃんの状態が思ったより深刻な事に今更気づいた。
いや、本当はこの兄弟が来た時からずっと怯えていたのを見ていたはずなんだ。
だけど俺から何かを言う訳にもいかず、結局はAちゃんが大丈夫だと笑うのに頼り切っていた。
ソファに寝かせて近くにあった毛布を掛けてあげると、後ろから弟者くんがAちゃんの顔を覗き込んだ。
その熱を孕む瞳にドクンっと心臓が嫌な音をたてる。
こいつ、
___あー、惜しかったなぁ…
そう確かにAちゃんが倒れる瞬間に言っていたのが聞こえた。
その瞳は黒く濁っていて、ハイライトを失ったそれは深い闇を見るかのよう。
「何したのさ弟者くん」
「別に？ちょっと警告みたいな？」
台所に入っていった弟者くんの背中を見届け、まだ起きてこない兄者を起こしに行こうか悩む。
だけど、今ここでAちゃんとこいつを二人きりにさせるべきではない。
「おついちさんさぁ、」
自分のご飯をよそって戻ってきた弟者くんが席に着きながら俺を見る。
「リードはちゃんと繋いどかないと、昨日逃げようとしてたからさ」
「…逃げるって、Aちゃんがか？」
「うん。まあ部屋に戻したけどね」
じゃあ、あの傷はその時のか…？
乱暴されたのは間違いないだろう。降りてきたAちゃんの虚ろな瞳とその下に出来た隈を見れば昨晩は一睡もしなかったと容易に想像出来る。
それに風邪も引いてるし、相当な体力が削られてるはず。
護るって決めたじゃねぇか、俺がこの子を護ってみせるって
ぎゅっと握りしめた拳を溜め息と共に緩めた。
それにしても、予想外なのは弟者くんだ。
どうしてAちゃんに構うのか。
恨みを持ってるのは確かだけど、兄者程ではない。むしろ、弟者くんは薬の方にしか興味がないような気がしたんだけど…
ご飯を美味しそうに頬張るその姿は大型犬そのもので、実に可愛いのに考えてる事が全く読めない。
もしAちゃんを気に入ったのだとしたら、だいぶ面倒な事になってしまう。
まあ、こいつに限ってそれはねぇよな…
兄者もいる事だし、復讐は何がなんでも果たすだろう。
それまでに確実にAちゃんの信頼を得て逃げる用意をしなきゃならない。
この兄弟は、もうその一歩を踏み出している。
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北海ユキノコ(プロフ) - 続きを楽しみに待ってます！頑張って下さい！応援してます！ (2023年2月20日 17時) (
レス) id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
北海ユキノコ(プロフ) - いつも、ワクワクしながら読んでます！ (2023年2月20日 17時) (レス) @page41 id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - ばおばぶさん» コメントありがとうございます…！何度も…！！本当にありがとうございます。これから登場人物も増えていく予定ですので、お楽しみくださいませ！！ (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - konbu_3723さん» コメントありがとうございます…！とても嬉しいです…、リアルの方でバタついていたのもありそのお言葉で涙が出てしまいました。更新頑張ります。暑い日が続いてます。konbuさんもどうかお体に気をつけてください。 (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
ばおばぶ(プロフ) - 御三方にハマってから占ツクでこちらのお話を見つけて実は何度も見に来ていたので更新とても嬉しいです！！今後の展開も楽しみです(*´﹀`*) (2022年3月26日 2時) (レス) @page38 id: 656b6dd078 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：。 | 作者ホームページ：http:/http://commu.nosv.org/p/tensan819
作成日時：2019年3月7日 18時
