25話 ページ26
『それはダメです』
そっとおついちさんの頭に触れてみる。
ふわふわとした髪質で、撫でる度にシャンプーのいい香りが鼻腔をくすぐった。
「どうして？Aちゃんは俺を許してくれない…？」
『違います。三人で、話し合ってください。私はおついちさんを憎んでも恨んでもいません。どんなおついちさんでも、私は好きですから』
耳に直接響く声が心地よくて、ここから離れるのが惜しい。
"これが最後"だからなのか、私も腕に力を込めて、そして離れた。
案外すんなりと解放してくれたおついちさんの頬にはまだ涙の跡があって、自分よりずっと歳上の人が泣いてるのはどうも心臓に悪いというか…、そっとその跡を拭って私は今度こそ車から降りた。
運転席から不安そうな目でこっちを見るおついちさん。
「ねえAちゃん…？」
『はい？』
「どこにも行かないよね」
『……』
「ちゃんと、待っててくれるよね？」
どうしてこの人はこうも勘が鋭いんだろうか。
買い物袋を握りしめた手が冷たくなる。
全て見透かされているような感覚に私は無理矢理にでも笑顔を作った。
ねえおついちさん？
あの兄弟はいつか私を殺しにくる。
それが怖くて怖くて仕方ないんです。
兄者さんの刺すような視線も、弟者さんのドロドロとした言葉も、もう耐えきれないんです。
『それより時間は大丈夫ですか？面会時間とか、あ、そうだったアヤビさんにお礼伝えといてくれませんか？このワンピース、サービスしてもらっちゃって…。それと、』
「A」
『っ』
「俺を見て」
エメラルドのような瞳。
伸びてきた手を思わず振り払ってしまった。
彼の瞳が揺らいで、私は震える声を隠すように笑った。
『…ほら、早く行かないとダメですよ』
おついちさんはそれ以上踏み込むことなく、車を発進させた。
これが最後の言葉、か…
車が見えなくなると私は静かに家に入り、自分の部屋に向かう。
幸いな事に兄弟はまだ帰ってきてないようだった。時刻は夕方の6時頃。おついちさんが帰ってくるのはどれくらいだろう
それまでに出ていこう。
荷物をまとめて、それでどこか遠くに…
『どこに…？』
どこに行けばいいの？
もう家もない。頼れる親も親戚だっていないんだ。
これからどうやって生きていけばいいのか。
それでもここにいる訳にもいかず、ぎゅぅっと軋む胸を服の上から押さえた。
痛い、イタイ、
どうにか部屋に辿り着くとベッドに倒れ込んだ。少しだけ、寝よう…。起きたらここを出て___
そこで私の意識は途絶えた。
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北海ユキノコ(プロフ) - 続きを楽しみに待ってます！頑張って下さい！応援してます！ (2023年2月20日 17時) (
レス) id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
北海ユキノコ(プロフ) - いつも、ワクワクしながら読んでます！ (2023年2月20日 17時) (レス) @page41 id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - ばおばぶさん» コメントありがとうございます…！何度も…！！本当にありがとうございます。これから登場人物も増えていく予定ですので、お楽しみくださいませ！！ (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - konbu_3723さん» コメントありがとうございます…！とても嬉しいです…、リアルの方でバタついていたのもありそのお言葉で涙が出てしまいました。更新頑張ります。暑い日が続いてます。konbuさんもどうかお体に気をつけてください。 (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
ばおばぶ(プロフ) - 御三方にハマってから占ツクでこちらのお話を見つけて実は何度も見に来ていたので更新とても嬉しいです！！今後の展開も楽しみです(*´﹀`*) (2022年3月26日 2時) (レス) @page38 id: 656b6dd078 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：。 | 作者ホームページ：http:/http://commu.nosv.org/p/tensan819
作成日時：2019年3月7日 18時
