20話 ページ21
「あのね、Aちゃん」
エレベーターの数字が1に近づくにつれ、アヤビさんとお別れしなければならないと強く感じて寂しいと思った。
それでも、アヤビさんは言葉を選ぶように話す。
「恋っていうのはね、その人を好きと思うのではなく、その人と一緒にいたいと思うことなの」
好きと一緒にいたいは違う感情なんだろうか。
同じようで、違うもの。私にはまだまだそれが分かりそうになかった。
「だから、いつか」
ポーンっとエレベーターが一階につく。
ゆっくりと止まる感覚に慣れていない私はふらついたが、紙袋を握りしめて足に力を入れる。
開いた扉の先、ハットについたゴミを払うおついちさんが待っていた。
「Aちゃんにもそんな人が現れるといいね」
おついちさんがこちらを見る。
アヤビさんが最初に出会った頃に戻ったのを肌で感じた。
「お待たせしましたおついち様。ご注文通り、全て揃えさせていただきました」
「ありがとう、アヤビさん。それで"彼"の容態は…」
彼…？
その単語にアヤビさんの顔が一瞬だけ歪んだ。
「……もう、長くはないと」
伏せられた瞳に影が落ちる。
彼って、と私が口を開くよりおついちさんが苦しそうに零した方が先だった。
「本当にごめん、僕があの時に__」
「もう過ぎた話でございます。私が彼と一緒にいたいと願ったのですから…。もう、同じ後悔はしたくないのです」
「…そっか。また来るよ、今日はありがとう」
「はい。またのご来店、お待ちしております」
おついちさんが深くハットを被って出口に向かう。頭を下げたアヤビさんに何を言えばいいのか分からなくて、でもやっぱりアヤビさんはそんな私に気づいて顔を上げた。
その瞳から流れ落ちる宝石のような涙に、私は息を呑んだ。
「Aちゃん、恋はね、苦しくて辛くて…甘いばかりじゃない。だからこそAちゃんには後悔のない恋をしてほしいな。私と同じにはならないで…、そしてどうか、彼を救ってあげて」
__最後まで笑っていたアヤビさん。
帰りの車の中、さっきの言葉を思い出していた。"彼を救ってあげて"とはどういう意味なのか。聞けずに別れてしまった。
隣に座る彼に聞けば済むんだろうけど、それが出来ない。無闇に聞いてしまえば、おついちさんの何かが壊れるようで、やっぱり勇気のない私はその一歩を踏み出せずにいた。
「聞かないの？」
そんな中、そう切り出したのは他でもないおついちさんだった。
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北海ユキノコ(プロフ) - 続きを楽しみに待ってます！頑張って下さい！応援してます！ (2023年2月20日 17時) (
レス) id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
北海ユキノコ(プロフ) - いつも、ワクワクしながら読んでます！ (2023年2月20日 17時) (レス) @page41 id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - ばおばぶさん» コメントありがとうございます…！何度も…！！本当にありがとうございます。これから登場人物も増えていく予定ですので、お楽しみくださいませ！！ (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - konbu_3723さん» コメントありがとうございます…！とても嬉しいです…、リアルの方でバタついていたのもありそのお言葉で涙が出てしまいました。更新頑張ります。暑い日が続いてます。konbuさんもどうかお体に気をつけてください。 (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
ばおばぶ(プロフ) - 御三方にハマってから占ツクでこちらのお話を見つけて実は何度も見に来ていたので更新とても嬉しいです！！今後の展開も楽しみです(*´﹀`*) (2022年3月26日 2時) (レス) @page38 id: 656b6dd078 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：。 | 作者ホームページ：http:/http://commu.nosv.org/p/tensan819
作成日時：2019年3月7日 18時
