18話 ページ18
「だからって……見捨てていい理由にはならない、そうでしょう!?」
「A、」
肩に乗った手にほんの少し力が籠る。
私はそれを振り払ってニュートのトランクを無理やり奪い取った。素早く中に入って自分のトランクを取って外に出る。呆気に取られたように棒立ち状態のニュートをキッと睨んだ。
「ニュートがダメなら、私があの子達を助ける」
「ちがっ…!まってA!」
引き止める声を無視して建物内に入る。
ドアを閉めて内側から鍵をかけた。
外からガチャガチャと開けようとする音と私の名前を呼ぶ声がする。魔法、使えば簡単なのに、きっとそれどころじゃないのかもしれない。
私は手当り次第プレートが付いている扉を開けようとした。しかし開く扉がない。
ドロドロと何かが私の中を侵食していく。
そして最後の扉、勢いよくドアノブを回すと、それは案外簡単に開いた。
暗い室内の中を見渡す。
ここのプレートには何て書いてあったっけ…
そんなもの見ている暇はなかった。
「助けに来た、よ……」
何かが喉を鳴らす音がした。
そちらに目を向け、私は絶望する事になる。
扉から差す光に僅かに照らされたその巨体と、口の間から覗く鋭い牙。
よく見ればそれは真っ赤に染まっていて、食事中だったと悟る。その先にも何頭かいるが、中心にあるのは紛れもない私達と同じ種族だ。
血が滲む布を巻き付けたただの肉片となった"それ"。ギラギラと光る目が私を捕らえた。
恐怖で足が竦んだ。
____キメラだ。
何が合わさったか定かじゃない。ゾウのような巨体に背中から蛇のような尻尾が何本も不気味に垂れている。顔はヒョウみたいで、長く鋭い大きな牙がポタポタと赤いドロドロとした液体を地面に滴らせている。
頭の中で警報が鳴り響いた。
逃げろ、と指示は出すのに肝心の体は言うことを聞かない。まるで足だけコンクリートに埋められたみたいにビクともしなかった。
指先が氷のように冷たくなっていき、半開きだった口から情けない声が漏れる。
ニュートは、これを分かっていたんだ。
キメラになった動物達はいくら魔法を使っても元の姿に戻す事は不可能だった。
だから、唯一キメラに使われていないムーナだけを救ったのだと、理解するにはあまりに遅すぎた。
心の中で何度も謝った。
貴方を信じていれば、こんな事には…
部屋の奥に転がる肉片となった研究員。
私もあんな姿になると思ったら、恐怖で腰が抜ける。
鋭利な爪が私に振り下ろされ、一筋の涙が頬を伝った。
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莉亜 - 今日 映画みてきましたああああああ!ニュートかっこよかったあああ!です! (2018年12月23日 21時) (レス) id: 0b051a452c (このIDを非表示/違反報告)
たこ焼き(プロフ) - 豆犬さん» こちらこそコメントありがとうございます!映画行ってきましたー!!どんな形であれ、一度は観て欲しい映画です! (2018年12月3日 16時) (レス) id: 528c8409e6 (このIDを非表示/違反報告)
豆犬(プロフ) - 返信してくださり、嬉しかったです...!って映画観に行ったんですかあああ!?!?()← 羨ましすぎますw 私は観れそうにないのでDVDを待とう(真顔) (2018年12月3日 1時) (レス) id: 7127065132 (このIDを非表示/違反報告)
たこ焼き(プロフ) - 谷桐さん» 谷桐さん初めまして!あああああっ!貴方様もですかぁ!ここは沢山の同志がいて素晴らしい所ですね…(´;ω;`)ニュートさんのカッコ良さを表現できるよう頑張ります! (2018年12月2日 17時) (レス) id: 528c8409e6 (このIDを非表示/違反報告)
谷桐(プロフ) - 私もハマってしまった1人です…(笑)。ニュートがもうかっこよすぎて!小説更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2018年12月2日 16時) (レス) id: d68a053c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たこ焼き | 作成日時:2018年12月1日 4時