15話 ページ15
そうは思ったが現状は何一つ変わっちゃいない。所謂"密室"なこの状況をどう打破すべきか、私はまずその事から考えるべきだったと後悔する。
ぴちゃん、とどこかで水が弾ける音が聞こえるほか、ここには何の音もない。
光も上からのほんの少しだけで、あれが無かったら真っ暗闇だ。
牢屋の隅に小さな隙間を見つけ、そこに腰を下ろす。足に死骸が当たってしまい、キュッと身を寄せた。寒くはない。それなのに何故か震えが止まらない。
異臭に慣れた鼻がジンと痛み、やがて目尻に涙が浮かんだ。鼻をすすって涙を手の甲で拭う。
泣いてる場合じゃないんだと、私が何とかしなきゃって…、でもどうしたらいいのか分からない。
魔法も使えない、連絡手段もない。
今の私は一般人と何ら変わりないのだ。そんなちっぽけな私がどう足掻いたところで、精々大きな音をたてて気づいてもらうしか____音…?
ハッと頭上を見上げる。
"なぜ誰も来ない"?
そもそも人がこの高さから落ちたら酷い音がするはずだ。というかそれは私が実際に体験したのだからその通りなのだが、その後私は鉄格子を鳴らした。扉が壊れるかも試したくらいだから相当な音が鳴ったはずだ。
それに、ここはあまりにも音が響きすぎる。
上の誰かにもこの音は少なからず届いているはずだ。
それなのに、ニュートはおろか研究所の人間が現れないのはおかしい。
上は冬の夜みたいに静まり返っている。
私の生唾を飲み込む音ですら煩いくらいだ。
何か、あったんだ。
一気に不安が過ぎった。何かあった。ニュートが見つかったかもしれないし、私みたいに変なボタンを押して、今こうやって座り込んでいるのかも。
助けにいかなきゃ、
向かう先は鉄格子。もう一度隈無く調べてどんなに些細な手がかりでも見落とさないように目を見張る。
だけどやっぱりそれらしいものはあるわけもなく、ただ淡々と時間だけが過ぎていく。
事が起きたのは、私が鉄格子に蹴りを入れようか悩んでいる時だった。
鉄格子の向こう側に仄かな光が現れた。
それは人魂のようにユラユラと左右に揺れ、やがて私の牢屋まで一直線で近づいてくる。
私は怖くなって一歩後ずさった。
それが悪かった。後ろ向きに進めば足元は疎かになる。案の定、死骸の一つに足を取られて後ろに重心が傾いた。
反射的に両腕が地面に手をついて衝撃を柔らかくしたが、その拍子に捻っていた手首が悲鳴を上げる。
光は、私の牢屋の前でピタリと止まっていた。
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莉亜 - 今日 映画みてきましたああああああ!ニュートかっこよかったあああ!です! (2018年12月23日 21時) (レス) id: 0b051a452c (このIDを非表示/違反報告)
たこ焼き(プロフ) - 豆犬さん» こちらこそコメントありがとうございます!映画行ってきましたー!!どんな形であれ、一度は観て欲しい映画です! (2018年12月3日 16時) (レス) id: 528c8409e6 (このIDを非表示/違反報告)
豆犬(プロフ) - 返信してくださり、嬉しかったです...!って映画観に行ったんですかあああ!?!?()← 羨ましすぎますw 私は観れそうにないのでDVDを待とう(真顔) (2018年12月3日 1時) (レス) id: 7127065132 (このIDを非表示/違反報告)
たこ焼き(プロフ) - 谷桐さん» 谷桐さん初めまして!あああああっ!貴方様もですかぁ!ここは沢山の同志がいて素晴らしい所ですね…(´;ω;`)ニュートさんのカッコ良さを表現できるよう頑張ります! (2018年12月2日 17時) (レス) id: 528c8409e6 (このIDを非表示/違反報告)
谷桐(プロフ) - 私もハマってしまった1人です…(笑)。ニュートがもうかっこよすぎて!小説更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2018年12月2日 16時) (レス) id: d68a053c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たこ焼き | 作成日時:2018年12月1日 4時