夜に紛れ＿＿。◇ 第一章【時透無一郎】 (ページ34)

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朝の焼け火,34 ページ34

◯。朝の焼け火

琉「カァーカァー
　煉獄杏寿郎死亡
　死亡ー！

　上弦の参ト格闘ノ末
　死亡ー！！」

次の日の朝
陽光がまんべんなく、辺りを照らし
里の皆さんがせっせと仕事を始めた時間の事だった

一人縁側に座っていた

すると、琉が飛んできたと目視し、
腕を曲げて構える
そこにふわりと止まると
さっきの報告を受けた

まさか、と思った
絶望のどん底に落ちた気がした
柱がまた欠けてしまった
煉獄様が今度は亡くなってしまった
わたくしは何も、出来なかった

浅い息を繰り返す

次々と殺される
この四年程で何人の柱が殺されたか

何故、わたくしは生きているのか
わたくしよりも強いお方はもちろんいらっしゃる
なのに、なのにわたくしは生きているの

わたくしの身体は、
女身体は、戦うように作られていない
だから、どんなに鍛錬しても
手は柔らかくてマメができるだけだし
ご飯を食べて運動をしても筋肉はつきにくい
むしろ、ご飯を食べると
色んなところに脂肪がつく
更にこの年頃になってくると
胸元が成長してきて
邪魔になってくる

それに対して
男の人は手はかたくてしっかりしてるし
よく運動して、よくご飯を食べれば
筋肉もよくつくし、体力ある
上背あって、邪魔なものもない
女よりも断然に強い

強い方、柱様達は何故去ってしまうのだろう
何故行ってしまうのだろうか
神の悪戯だろうか
世界の修正だろうか
こんな存在がいてはいけないという戒め？
何故私はそんな中で生きてしまってるのだろうか
つまり、わたくしは強くないという事なのか

顔をくしゃりと歪ませ、
目を瞑った
現実と向き合うたびに、
心が無くなっていく気がする
心を蝕んで、
侵食して、傷つけて
綺麗ではないと思う
煉獄様のような
綺麗で真っ直ぐで
透き通ったような、素直な心とは程遠い
汚く、ボロく、脆い
不完全な心

いつしかわたくしは
人の死を見なかった事に
しようとしていると思う
人はいつか死ぬ、そう言って自分を
慰めている
酷い人間だと思う

思えば思う程、
苦しく胸を罪悪感で締め付けていった

目を片手で隠し、俯く

ひと粒の涙が頬を伝う

まんべんなく照らす太陽は、
眩しすぎて
わたくしには勿体なかった