暇の楽しみ方,29 ページ29
○。暇の楽しみ方
ブラブラと町を参観していた
さっきまで食べていた
菓子の味がまだ口の中に残っている
甘露寺様とあの後いろんなお話をし
店を後にした
甘露寺様はこの後、伊黒様と稽古するらしい
すぐに行動できる甘露寺様が羨ましいと
思ってしまった
「気持ちを伝えないと」
そんなことして、無一郎くんの
記憶が混乱してしまうようなことは
したくないと思っていた
でも、何もしないまま
師弟関係だけで過ごしていたら
きっと何か後悔する
そう思ったものの
何をすればいいのか
さっぱり分からない
思いを伝えるのも、
きっと無理だと思うし、
何より迷惑
だとしたら、
何かあげようかと思ったけれど
無一郎くんは何が好きなのかを
わたくしは知らない
結果的に、
どうすることもできなくて
行き詰まってしまった
こんなに時間を無駄にしているなら
帰って稽古したほうがいいのでは
という考えさえ浮かんでくる
「そこの青髪のお嬢ちゃん」
そう言われて、声がした方向を見る
そこは小間物の店だった
「綺麗な髪色だねえ
この簪とか髪紐とかにあうよ」
店に入るとお飾りがたくさんあって
自然とウキウキとした、高揚した気分になる
花柄の利梵や細かい細工の簪
着物の帯にさすお飾りまである
無一郎くんに刀のお飾りあげようかな
『あの、刀に合うお飾りないかしら』
「あ〜刀にか
これとかどうか?」
店主が見せたのは
碧と白で編まれた髪紐の様なもの
先の方には半透明で白い丸い玉と
紺の濃くて小さく丸い玉がついていた
無一郎くんの毛色にそっくりで
思わずほっこりする
刀につけたら綺麗でしょう
想像するだけで幸せが
こみ上げて来る気分だと思った
『じゃあそれに致します』
お金を払いお飾りを受け取った
すると店主は
ボソッと話をする
「あんま詮索したくないけど
刀っちゃあどういうことだ?」
『家宝につけたくて
何も無いままでは寂しくて』
「あ〜、士族様か
こりゃすまん
また来てくれよ〜!」
店を足早に出た
無一郎くん、気に入ってもらえるかな
期待を胸に
屋敷へと戻った
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作者名:下倉琉羽 x他1人 | 作成日時:2021年10月10日 11時