41話 俺だけの過去 ページ42
過去
俺はどこか知らない国に生まれた。
小さい頃に捨てられたところを通りすがりの人が拾ってくれて育てられたけど、5歳の時に育ててくれた人から暴力に遭い、家をでて一人で彷徨った。
そして辿り着いた場所はトランプ王国だった。
騎士が馬に乗っているのを街で見て、凄いかっこいいと思ったことがきっかけで騎士になった。
あんまり人と仲良くしても裏切られるかもしれないから極力関わらないようにしていた。
でも迷惑をかけるのが面白くて、けっこう問題を起こす時期が増えた。
あの時のようにまた殴られるかな、と思ったのに騎士のみんなは笑ってくれていた。
それが居心地よくて、俺の辛かった日々は少し楽しくなった。
でも友達はいなかった。
「A。今日飲みに行こうぜ！」
気軽に誘ってくれる人はいても、友達ではなかった。
騎士としての仲間しか俺の周りにいなかった。
だけど俺が近衛騎士に昇格して、王女のそばに仕えることになった時。
「体を動かしてきますね」
「でも王女様。病み上がりだから外に出ないように国王から言われ……」
「さあ、なんのことでしょう」
王女は知らないふりをして外に出たから追いかけた。
王女の足の速さなら追いつけるのに、部屋に連れ戻そうとは思わなかった。
庭に出ると王女は落ちていたボールを俺に投げつけてきた。
しっかりボールを手に掴むと、王女は楽しそうに俺からボールを投げられるのを待った。
「俺が怒られます」
「私が責任をとります。さあ、遊びましょう」
ボールを投げると楽しそうにボールを掴んでくれた。
今度はボールを蹴って遊んだり、追いかけっこをしたり、たくさん身体を動かした。
「外に出てよかったでしょう？」
王女は満足げに俺にそう聞いた。
「楽しかったです。また遊びましょう、王女」
「王女様、でしょう」
この日を境に王女と親しくなった。
でもジョナサンと王女が愛し合ってからは変わった。
もう俺と遊んでくれることはなくなり、また平凡な日々に戻った。
「キュアソードが歌ってくれるみたいなの。Aも聞くでしょう？」
「体調悪いので、帰ります」
「え？」
面白くないから仕事をさぼるようになった。
そんな時に王女が死にかけて、事あってキングジコチューが誕生した。
今考え直しても、やっぱり愛されたことはなかったな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちゃゆ | 作成日時：2022年11月25日 0時
