36話 悪い思い出だ ページ37
過去
ジョナサン・クロンダイク。
俺と同じく王女の近衛騎士を務めていたけど、妙に王女と距離が近かった覚えがある。
俺も王女と距離は近い方だった。
「王女。なんで手紙に向かって微笑んでるんですか？ 気味悪いですよ」
「王女様、でしょう。それに気味が悪いだなんて初めて言われました。はぁ……」
よく困らせていた。
「大切な人からいただいた手紙ですよ。これを見ると幸せになれるの」
「俺にも見せてください」
「嫌です」
無理矢理手紙を取ってみたら、「ちょっと！」と怒られた。
中身を見るつもりはなかったけど、俺にしがみついて手紙を取ろうとする王女が一生懸命で、少し後ろに後ずさると転んでしまい、このまま2人で地面に着いた。
王女は俺の胸の中にいる。
「いてて、大丈夫ですか？」
この時だった。
床に落ちた手紙の中身が少しだけ見え、そこにはこう書いてあった。
【アン、愛してるよ。 ジョナサン・クロンダイク】
俺たちが地面に転倒した音がドアの外にまで聞こえていたのか、メイドたちが急いで入室してきた。
「！？」
王女が俺の胸に抱きついていたところを見たメイドはびっくりしていた。
「ああ、すみません。俺がちょっとからかったせいです」
しまいには王女からげんこつを食らった。
「まったく。貴方にはもう少し教育が必要ですね」
この後、城中に俺と王女の話が広まった。
「王女が近衛兵に抱きついてたんですって」
弁解するのも面倒だったからその話は避けてきたけど、ある日、ある男が俺の前にやってきた。
それがジョナサン・クロンダイクだ。この時、俺はこの男と初めて会話をした。
「王女様は大丈夫だったかい？」
こいつと王女は恋仲なんだよな。少し意地悪してみよう。
「ああ。気持ちよさそうに俺の胸に飛び込んできただけなんでね」
煽ってみたらこいつの顔が曇った。
「じゃっ、仕事あるので」
俺は殴られる前に逃げた。
あれからジョナサンと話したことは無い。これが俺とジョナサンの最初で最後の会話だった。
今思い返すと俺ってやつは性格が悪い。
「(もしジョー岡田がジョナサンだったら……)」
そう考えるだけで鳥肌がたつ。
「A君。おかえりなさい」
「ありす。ただいま」
自分の部屋に戻って赤いラビーズを両手に握った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちゃゆ | 作成日時：2022年11月25日 0時
