30話 矛盾してる人 ページ31
「前に言っただろ。俺みたいな人は好きにならないって。
どうしたら好きになってもらえるんだ」
「……私に好きになってもらわなくてもいいと思うんだけど。
貴方は、私のことは好きじゃないでしょ？」
確かにあの日そう言った。
「お、俺の好きな人が歌姫と同じこと言うかもしれないだろ……」
「確かに。でも、恋愛がどういうものなのかわからないからなんとも言えないわ」
そもそもの問題か。
「俺だけ見てろよ、って思うんだよ」
「自分勝手になるのね」
「そうだよ。ずっと隣にいてほしいなって思うし、その、可愛くて、愛おしいなって……」
自分で言って恥ずかしくなってきた。
「とにかく、他よりも好きだなって思えたら恋なんだよ」//
大雑把にまとめたけど伝わったかな。
「……そうなんだ」
伝わってないな。
「貴方の好きな人、見てみたいわ」
「……歌姫の知ってる人だよ」
「え？」
「てか、もう外暗いじゃん」
時間を見ると、もう外が暗い時間だった。
「家まで送るよ」
「ダビィが車を出してくれてるから大丈夫」
「そうか。じゃあ、気をつけて」
「ありがとう。来週の金曜日も行けるかわからないわ」
その言葉を聞いて考えた。
「……会うのやめるか」
「！」
「忙しいのにわざわざ来てもらって悪いし。だから、もう俺のとこ来なくていいよ。ごめんな」
「それでいいの？ 寂しくない？」
「……うん。もう寂しくない」
「……そう、わかったわ。来週から行かない」
少しでも会いたいって言ってほしかった。
「じゃあな、歌姫」
この部屋から歌姫がいなくなった後、俺は一人でソファに座って頭を抱えた。
(きっつ)
自分から会うのやめよって言ったくせに後悔すんなよ。
・
車の中
「タビィ」
「どうしたの、真琴」
「私の知っている人に、生意気だけど可愛い女の子っている？」
「んー。……一人、いるわね」
「誰？」
「さぁ、誰でしょう」
今日のダビィは意地悪だ。
「真琴にとってAってどういう人？
わざわざ家にまで行って話したいことがあるなんて、仕事で疲れてる真琴らしくないから」
「……矛盾してる人よ｣
あの人は、寂しい顔をして寂しくないって言う人。
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作者名：ちゃゆ | 作成日時：2022年11月25日 0時
