27話 金持ちはいい ページ28
「ココアいれたの。飲まない？」
「……飲もうかな」
立花は俺の部屋のテーブルにココアを置いてくれたから一緒に飲んだ。
暖かくて美味しいな。ふられた俺の心を癒してくれる。
「何かあった、よね？」
「……無いよ」
「嘘。悲しそうな顔してる。海藤さんと何か……」
「海藤さんは関係ない」
「……私には話せないこと？」
「……ごめん」
「……そう。何かあればなんでも聞くから気負わないでね」
「ありがとう。もう寝ようかな、おやすみ」
「おやすみなさい」
俺の部屋を出ていく立花の後ろ姿は頼りがいがあった。
今夜はまったく眠れなかったから、もう寝ないで次の日を過ごそうと思った。
眠気覚ましに早朝から外に出て散歩をした。
立花の両親が家にいると思うと邪魔者は出ていかないといけないから、そろそろ出ていこうかなとか考えた。
「(どこに行こうかな)」
「あ、あの！」
聞き覚えのある声に視線を向けると海藤さんだった。
「昨日はごめんなさい。もうモデルをしてとも言いません」
「……流石に脱ぐのは嫌だった。けど一緒に食事したり、写真撮ったのは楽しかったよ」
「っ、ありがとうございました」
「もう写真は撮り終えたのか？」
「い、いえ。でもまだ時間はあるので、自分の力で頑張ろうと思います」
「がんばれ。完成したら見せてよ」
「！ はい！すぐ見せます！ 学校があるので失礼します」
「おう」
根はいい子なんだよな。
てかもう学校に行く時間か。歌姫も行ってるんだよな。
いいなぁ、俺も学校に行ってみたい。
「行ってみますか？」
「！？ あ、ありす」
びびった……。
急に後ろから声掛けてくるなよな。
「学校に通ってみませんか？
いつもお世話になっているので、学校に通わせることくらい容易いですけれど」
「いやいや。もっと大切なことにお金使えって。友達のためとかさ」
「お友達、ですが」
「え？」
「A君もお友達ですよ」
なんでそんな恥ずかしいこと言えるんだ。
「いいよ。俺は今、働き口探さないといけないんだ」
「どうしてです？」
「立花の家にこのままいると家族に申し訳なくてな。だからお金を貯めて出て行こうと思ってるんだ」
「では、私の屋敷で働きませんか？」
……ん？
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作者名：ちゃゆ | 作成日時：2022年11月25日 0時
