25話 助けてくれた ページ26
タワーを出ると、海藤さんは疲れ切った顔をしていた。
「大丈夫？」
「ちょっと目が回ってしまいました。あはは。帰りましょう！」
「家まで送る」
海藤さんの家は近い場所にあった。
マンションの8階で、クローバータワーがベランダから見える。
景色のいいところに住んでいるんだな。
「お大事にな。明日はゆっくり休めよ」
「……Aさん」
海藤さんは不意に俺の腕を引っ張って家の中に入れた。
ドアを閉めると、鍵までロックした。
「おい」
「お願いがあります。どうしても、服を脱いでもらいたいんです」
……そんなに体の写真撮りたいかよ。
「断ったら、今すぐまこぴーとの写真を記者に渡します」
気を抜いてはいけなかった。
ここで服を脱げば解決する話、だけど、俺にだって羞恥はある。
どうしよう。
＿＿ピーンポーン＿＿
「配達です」
「……私が出ます。ちょっと待っててください」
ドアを開けた瞬間、びっくりして目を見開いた。
「歌姫？」
なんで、こんなところにいるんだ。
「今の録音してあるから。はやくその人を帰してあげて」
「……できるわけないでしょ。家の外に声が届くわけ……」
「彼のフード」
ジャケットのフードに手をやると録音機が入っていた。もしかしてクローバータワーでいれたのか？
「ちゃんと録ったわ」
「！ ……ごめんなさい。Aさん。帰っていいですよ」
「写真、記者に渡す気か？」
「渡さない。頭冷やしたいから、もう帰ってください」
家を出ると、海藤さんはドアを閉めて一人になった。
「来て」
歌姫は俺の手をひいて、エレベーターで9階まであがった。
そして奥の部屋のドアを開けて入った。
「お、おい。ここ……」
「私の家よ」
「え？」
俺の好きな人の家。
確かに歌姫の匂いがするけど……、マジか？
「二人だけかと思ったら大間違いビィ」
「げーっ。なんだよ」
「げっ、とはなにビィ！」
「何してるの？ はやくあがって」
お茶をだしてもらった。
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作者名：ちゃゆ | 作成日時：2022年11月25日 0時
