20話 嫌味な脅迫？ ページ21
金曜日がやって来た。
俺がずっと待ち望んでいた金曜日。
公園に行くと既に歌姫はベンチに座っていて、嬉しかった。
「待った？」
「ううん」
歌姫の手を握る。
「ねえ、これ、いつまで続けるの？ もう寂しくなんてないでしょ？」
「寂しいよ(嘘)。歌姫は寂しくないのか？」
「っ。寂しいけど、こうして手を繋がなくたっていいじゃない」
「……俺に触れられるの嫌？」
「嫌じゃないわ」
歌姫は前を向いて言った。
「ただ、ムズムズするのよ。落ち着かない」
俺はこんなに落ち着いていて幸せな気分になってるってのに。
嫌じゃないのに落ち着かないってなんだ？
「ゆっくり慣れればいいよ」
「ずっと続くわけじゃないのに、慣れる必要がある？」
言う通りだ。
これがずっと続くわけじゃない。きっと終わりが来る。
俺はその終わりまで一緒にいたいと思うけど、歌姫からしたら迷惑なんだよなぁ。
＿＿それでも、俺はわがままを突き通したかった。
「！！」
俺は歌姫から手を離してゆっくり抱きしめた。自分の胸の中に歌姫を閉じ込めるように優しく。
歌姫は驚いているのか、何も言わずに俺に身をゆだねるだけだった。
(ああ、気持ちいい)
「や、めて！」
俺の胸を思いっきり押して退けようとしたから、その力に任せて歌姫から離れた。
「何するのよ」
「嬉しい？」
「嬉しくないわ」
俺は嬉しい。
「最悪！ 最低！ もう知らない！」//
歌姫は立ち上がって、怒ったようにこの場を去って行った。
「あーあ。あんなに怒ることかね」
「そりゃあ、好きでもない人に抱かれたら嫌ですよ！」
「！？」
ベンチの後ろから大貝中の制服を着てカメラを首にぶら下げた女の子が出てきた。
「お前、さっきの……」
俺にモデルをやってくれって頼んできた子だ。
なんでこんなところに？
「たまたま見つけました。
お願いします！ モデルになってほしいです！」
「なる気は無いって……」
「今！ 私は貴方がまこぴーにハグしてる写真を撮りました。
これを世間にばらされたくなければ私のモデルになるのです！」
ゲスいことしやがる。
俺は歌姫のために、この子の言うことを聞いた。
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作者名：ちゃゆ | 作成日時：2022年11月25日 0時
