11話 コンテストへ ページ12
このコンテストが終わったら歌姫に一昨日のことを謝ろう。
ステージを見ていると、俺の近くでスタッフらしき人たちが焦ったように何やら話していた。
「どうしよう。ソシアルダンスのスタッフが一人欠員だよ」
ソシアルダンス
他国の舞踏会に参加するってなった時に、無茶苦茶指導させられた覚えがある。
「俺、やりましょうか？」
松葉杖を端っこに置いといて、泣きそうな顔で俺に感謝しながらタキシードを用意してくれた。
俺は顔バレすると六花になんで杖をついていないのかって怒られるから、仮面をつけさせてもらった。
ステージに出ると、もうみんないて、当たり前だけど俺が最後だった。
「あらら？ お猿さんは踊る相手がいないのね」
何やら五星と呼ばれるあのお嬢が歌姫をイジっていた最中だった。
でも俺が登場したことで、みんな俺に視線を集めるようになったから六花が目立たなくなった。
「な、なにあのイケメン」
「かっこいい！」
嬉しいことに会場を盛り上がらせることができた。
仮面をしているにも関わらずイケメンと言われる俺、凄いな。
「お手を」
「……貴方、なんで」
声を聞いただけで歌姫にはバレてしまったけど、六花にバレなければいいか。
「理由はあとで」
歌姫は仕方なさそうに俺の手に手をのせてくれた。
それを見た向こうのお嬢さんはものすごい悔しそうな顔をしていた。
セバスチャンによると、ありすは自分の友達を傷つけられるとキレるらしい。
あんまり怒らせないように俺も気を付けよう。
「……踊ったことない？」
「仕事であるわ」
「それにしてはぎこちない踊りだな」
「貴方と踊るからよ」
「貴方って？」
「A」
ああ、気持ちいい。
好きな子に名前を呼ばれるのは気分がいい。
「そのドレス、似合ってるよ」
＿＿ダンスに参加してよかった。こうして近い距離で話せて、この子に触れられるんだから。
「ふざけないで」//
「照れてるくせに」
「もう黙って」
「ははっ」
話していると、急に「わっ！？」とマナの声が聞こえた。
視線を向けるとヒールが片足だけとれたみたいで、音楽が止まった。
あんな風にとれるのはおかしいから、誰かが細工したんだろう。
でもマナは気にもせず、もう片方のヒールを折って踊ることにした。
「大胆だな」
「そういう子よ」
「面白い子がプリキュアになってくれたな」
そう言うと、歌姫は嬉しそうに「そうね」と言った。
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作者名：ちゃゆ | 作成日時：2022年11月25日 0時
