鬼になった青年の話【胡蝶しのぶ】

悪に染る。 ページ35

俺は鬼舞辻に会っていた。

今は無限城にいる。


｢勝手なことをしてくれたな。
潜入捜査ができなくなっただろう｣


おっかない。
これは今にも殺されそうな予感。


｢これでいいんだよ。
敵対視させればわかりやすく守りが固くなる。

俺は先読みが得意だから、鬼殺隊の行動はお見通しなんだ｣


｢ならばこれからどうするか述べよ｣


｢どうせ1番強い柱が本部を守る。
他の柱は自分たちの屋敷の周りを見張るはず。
その柱についてけば鬼殺隊の本部なんてすぐ見つかるさ。

最終的に無惨様は、お館様に逢いに行く予定なんだろ？｣


｢……｣


｢何すんのかは知らないけど。
無惨様の想像を超えたことをしてくるはずだ。

それで鬼殺隊に囲まれて行き場を失ったら、
ここ無限城に落とせばいい。

日が当たらないんだから鬼は死なない。
人間の体力が落ちるのを待って殺しなよ｣


｢貴様は戦略に長けているな。
今、上弦の肆と陸を向かわせている。

予想しろ。鬼殺隊に勝てると思うか？｣


｢……どこ向かってるの？｣


｢刀鍛冶の里だ｣


｢刀鍛冶ね……。情報少なすぎるから下見してくる｣

｢予想しろと言ったはずだが？｣

｢的確な予想をするために行くんだよ｣

｢ほう。直ぐに行ってこい｣


シュッ！


｢戦力のある人間を鬼にできたのはいいが、
こうも簡単に柱を手玉にできるとはな｣


刀鍛冶の里に向かうと鬼殺隊がいた。

炭治郎、禰豆子、玄弥、時透、甘露寺か。


｢……｣


炭治郎が粘り強いし、玄弥も玄弥で不死川追っかけてるから鍛えてはいるだろうな。

甘露寺もああ見えて力強いし、傷つけた人は許さないからガンガン攻めそう。なんたって煉獄の継子だったから実力はある。

時透もボーッとしてるけど才能あるよな。2ヶ月で柱は時透だけだ。気に入らないやつには冷たいけど、今回炭治郎みたいな平和な人がいるとなるとやる気が変わるだろうな。


｢……勝てるんじゃね？｣


この世代の鬼殺隊は、何かやってくれる気がする。



(……A)



｢！！｣



頭の中から、無惨が俺に話しかけている。



(どうだ。的確な予想を言えるか？)



｢鬼殺隊が勝つ｣



(……そうか。
ならば貴様が鬼殺隊に怪我をさせろ)



｢！｣



(できないのか？)



｢できる｣




俺はどんどん闇に染る。

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