殺してください 弐【胡蝶しのぶ】

生きてほしい ページ42

｢ありがとうございました！！｣


｢今日はまあまあ合格か。カナヲ、お疲れ様｣

｢お疲れ様です｣

｢なぁ、俺と稽古しない？｣

｢？はい｣


木刀を交えた。

カナヲの太刀筋は綺麗だ。無駄がない。

もう少し鍛えれば柱に匹敵する。


｢はぁ…｣


それでも俺には勝てないけど。


｢これだけ息が合えば上弦にも立ち向かえる｣


｢死なせたくない｣

｢……｣

｢しのぶさんが上弦に会う前に、私たちで殺りましょう｣


真っ直ぐな目はしのぶに似てる。

義理の姉妹なのにそっくりだ。


｢生きていてほしいよな｣


でも彼女の意志を尊重したいのもある。


｢しのぶさんは、しのぶ姉さんは生きたいはずです｣


｢1年間がんばって飲んできたんだ。

必死に副作用に耐えてきたんだよ。

お前はそれを無駄にする気か？｣


｢それでも生きていてほしい！家族だから！｣


この子が大きな声を上げるのを初めて見た。


｢この先、しのぶ姉さんは何十年も生きる。

今までの辛かった日々を越えるくらい、たくさん生きるの｣

｢……｣


｢反対だ｣


｢！｣


道場の扉に桐生がいた。

稽古が終わったのかスッキリした顔をしている。


｢しのぶは鬼に喰われる、そしてお前が頸を斬る。

この結末が一番いいに決まってる｣


｢っ！｣

｢しのぶは最初はお前を殺すために毒を開発してたんだ｣

｢！｣


｢でもやっぱりお前を殺せない。だから標的を変えた。

そしてたどり着いた復讐が今ってわけさ。

どうしてお前を殺せないかわかるか？｣


｢真司、それは…｣

｢もういいだろ。言わないとわからねぇだろうし｣


桐生はAの胸ぐらをつかんだ。

そして眉間に皺を寄せて発言した。



｢しのぶは、お前が好きなんだよ｣



………？



｢なに、言ってるんだ。そんなわけないだろ｣


｢そんなわけあるんだよ！

お前が好きだから殺せなかった！だから諦めた！

いい加減気づけよ！！！｣


｢さっき、終わりにしてきた｣

｢は？｣

｢彼女とお別れしてきた｣


落ち込んだ顔をしていたけど声のトーンは変わらなかった。


｢なら、しのぶの成したいことを手伝え｣


両思いだとは思ってもいなかった。

内心、心から嬉しかった。


だからだろうな。



余計に生きてほしいんだよ。

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