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いつも通りにAの病室に行くと、Aのお母さんがいた。
「…あら、万里くん。おはよう」
「おはようございます」
久しぶりに見た、Aのお母さん。
仕事の都合でなかなか顔を合わせていなかったからか、涙ぐんでいた。
「いつも悪いわねぇ…。この子のお見舞い…」
「いえ…俺が好きで来ているだけなので」
そう言って俺はAの近くに座って、いつも通りに「おはよう」と言った。
まだ、目は覚まさない。
「……、万里くんはいつも来てくれているの?」
「はい…。毎日来てます」
「そうなの…ありがとうね。きっとAも喜んでるわ」
Aのお母さんは伏し目で言うと、小さく着信音が鳴った。
俺に「ごめんね」とだけ言うと、病室を足早に出ていった。
それを見届け、Aの頭を撫でる。
「今日さ、劇団のやつらに言われたんだよ。『いつ結婚するんだ』って」
「『結婚出来る歳じゃねーから、まだしない』って、あいつらには言っておいたけど、俺はもう準備できてっから。」
「そういえばさ、俺委員長のモノマネできるようになったんだ。
『牧瀬さん、起きてください!』…どう?似てるか?」
乾いた自分の声が、じんわりと部屋に消えていく。
そして、だんだん嗚咽に変わった。
「…ほんと、委員長の…言う通りだよな……」
「早く起きろよ…A…、」
まだ、知らないだろ。
お前がいない時間がどれだけ退屈で、苦しいか。
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ちえ - 万里君誕生日おめでとうなの (9月9日 0時) (レス) id: 67f766a775 (このIDを非表示/違反報告)
四季(プロフ) - 初コメ失礼します。自分も最近初恋の人が亡くなって、この小説で涙腺崩壊しました。素晴らしい作品をありがとうございます。 (2022年3月29日 23時) (レス) @page11 id: 778d677fec (このIDを非表示/違反報告)
蒸田。(むしだ)(プロフ) - おじさんさん» コメントありがとうございます。ファン……なのですか……嬉しいです、ありがとうございます… (2018年9月10日 9時) (レス) id: f91a58f64c (このIDを非表示/違反報告)
おじさん - 電車内で号泣しました、、、、本当に蒸田。さんの書かれる小説が好きです、、。ファンです、、、 (2018年9月10日 8時) (レス) id: f6e256f09f (このIDを非表示/違反報告)
蒸田。(むしだ)(プロフ) - ゆらさん» コメントありがとうございます。いい作品と言っていただいて、とても嬉しいです…。続編に関してはまだ考え中ですが、楽しみに待って頂けると全私が喜びます。 (2018年3月17日 14時) (レス) id: f91a58f64c (このIDを非表示/違反報告)
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