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あの日、あの男に紹介されたのが目の前の人だったことは、私にとって幸せだったのか不幸せだったのか、もうどちらかなんて区別できない。
目の前の人だったことによって私はまた恋や愛なんて薄っぺらいものだと決めつけていた、それらに振り回されてる。
でも、戻りたいとは思ってないから、不幸せだと尋ねられても頷くことは出来ないんだと思う。
私を見るその目が、愛おしいものを見るそれとは重なることがないって分かっているのに。
悲劇のヒロインは、幸せになったら物語に要らないから、私はこのまま不幸せになる方がいいのかな。
悲劇のヒロインになりたくないと言っていたのに、物語から、目の前の人の中から消えちゃうくらいならなってもいいかな、なんて。
逸らし続けた目は、もう無理やり合わせられることはなくなった。
触れていた唇の先も、いつしか離れた。
触れる指も、その熱も、私から遠のいた。
これでいいと、自分に言い聞かせながら涙を必死に押し込んだ。
『アイドルとかファンとか関係ないって言えばいいのに。まぁ、関係ないとか勝手だって言うなら俺だってそうさせてもらう』
煙草と、香水の代わりに微かにする柔軟剤と、ほんの少しだけシャンプーの香りがした。
触れる場所から心音が伝わるくらい大きくて、私が唾を飲み込んだ振動も伝わっていたかもしれない。
腕を引かれてそのまま抱きしめられた私は、ぶつかるようにその胸に体を預けていた。
私に回された腕が、もう一度、もう一段階、強く縛られる。
「ちょ、っと」
『あいつとまだ会ってんの』
「あいつって」
『俺のこと紹介したあいつ』
言葉が詰まる理由なんて、ないはずなのに。
「…会ってるけど、関係ない」
『ねぇさっき言ったこともう忘れた？』
『俺が関係あるようになればいいってことでしょ』
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恍(プロフ) - 🦇さん» ご指摘ありがとうございます。追加しました！ (2022年1月30日 1時) (
レス) id: 7393041891 (このIDを非表示/違反報告)
🦇 - 18がないんですけど…こちこち (2022年1月30日 1時) (レス) id: eced2265dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：恍 | 作成日時：2022年1月18日 0時
