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『それもういいんだけど、知ってるからもう言わなくていい』
押し付けられた唇は少しだけ冷たく感じた。
もう長くこの会話をしているのかと我に返った。
逃げ続けてる自分が恥ずかしくなった。
でも向き合う勇気もなければ、私にその資格はないと思ってた。
『ねぇ、俺とどうなりたいの』
いつか私が言った言葉を、唇が触れ合う距離で呟いた。
痛いくらいにその意味が伝わってしまうのは、先が触れているからなのか、もう私の言い訳が尽きたからなのか。
そんな苦しそうに私を見ないで、と口にしてしまいたくなる。
都合よく解釈する私が、私の中に溢れてくる。
その選択が私をどれだけ不幸にしたって、もうなんでもいいと思うくらい、あの時の熱が私を手招きする。
また触れて欲しいと思ってしまった。
その一時だけでもいいから、たとえ嘘でもいいから、また私を愛して欲しいと思ってしまった。
「私の事、好きじゃない、ですよね」
『そんな事言ってない』
「だって、」
その後の言葉は、自分で自分の首を絞めてるみたいに痛かった。
貴方はアイドルだから、私は貴方のファンだから、あの日お互いを知らずに体を重ねた時はただの他人だったけれど、私達はそれ以前に関係性に名前があったんだ。
アイドルとファンという関係性は、ものすごく残酷なものだから。
私だけが貴方を知っている、貴方は私を知ることなんてない、そんな関係性。
一方的な矢印だと分かっているのに、それでも貴方に魅せられてしまったから止まれない、そんな思いになる。
私の一方的なその先端は、形を変えて貴方を支える微力になるのだけれど、貴方は私を単独で認識することなんてない。
それが当たり前で、確定事項で、いくら不条理だと思っても覆らない。
そう、理解していたのに。
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恍(プロフ) - 🦇さん» ご指摘ありがとうございます。追加しました！ (2022年1月30日 1時) (
レス) id: 7393041891 (このIDを非表示/違反報告)
🦇 - 18がないんですけど…こちこち (2022年1月30日 1時) (レス) id: eced2265dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：恍 | 作成日時：2022年1月18日 0時
