あるゆっくり達の独白 ページ39
いつの日か見た海は、まだ俺の心を溶かしてはくれない
森で迷子になったやつを探すのなんて簡単なことだ。森のおかしな場所で辺りを見渡しているやつか、手当たり次第進んでるやつを探せばいい。今だってそいつを見つけた。すごく背の高い人間でもそれより高い木が視界を遮っているようだ。
だがこれくらいなら俺らがいた場所よりもずっとずっと狭いはずだから問題ない。
と、思っていた。
いつまでたってもひらけた場所には出ない。自分の知識と経験は間違っていないはずなのに全く出口につくことはできない。だがここで迷ってるやつのように不安になってしまうことは何よりもいけないことだと見栄を張って涙なんて見せないで進み続けた。やがて、一筋の光が視界に入り込んだ。
まばゆい陽光を受けた遠くに見える見慣れた青は透き通るように美しく、そよぐ風は暖かく頬を撫でていく。それは懐かしい故郷の海とよく似ていた。触れると少し暖かくて映る自分の姿が波で消えていくのもまた面白くて、なにより、楽しい思い出がある。ふと頭に暖かい感触が降ってきた。それが雑なのに、ただの慰めってことくらいわかってるのにその温もりがいつか俺の心を溶かす気がして俺はそのまま静かに目を閉じた。
ーーーーーーーー
ただ歌っていたいから、そのためならなんだってできる。
木漏れ日の下で歌うのが好きだ。雨の日に部屋の中で歌うのも嫌いじゃない。ただ歌が好きだった。あの場所を離れる時だって、歌っていたような気がする。
「……え？」
「ゆっしゃ」
ふと頭上で声がした。自分の歌に寄ってくるのはとても嬉しいことだったがその大きな存在に敵意を隠すことができなかったのもまた事実だった。小さく威嚇するように、なんや、と聞けば相手は何か別のことをし始めた。歌の邪魔はせんでよ、と思いながらまた歌い始める。
広い草原と太陽と良い音が鳴る楽器のある木陰の下、これほど良いステージはなかった。
やがて楽器の音がより近くて鳴った。
「……ゆっしゃ…？」
「なぁ、歌ってや」
その優しい声と滑らかな手つきが音を奏で始めた。大部分のメロディに合わせてそっと声を出す。帰りたくても帰れない故郷を思い出せるように。あの場所で歌った記憶を忘れないように。ふと隣を見ると楽器を弾いた其奴もどこか苦しい顔をしている気がした。嗚呼、もしかして此奴も、俺と同じ。そう思えばこの大きな存在のちっぽけに思えて俺は明るすぎるこの世界の太陽を見て、そっと笑った。
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星空りゅな - ひえっ…ゆっぞむ可愛すぎませんか…？物凄くこの作品大好きです、更新頑張ってください！ (2019年5月3日 9時) (
レス) id: c5345c7420 (このIDを非表示/違反報告)
絶対匿名０３(プロフ) - 希白〜こはく〜さん» 報告感謝します。修正いたしました。 (2019年4月30日 16時) (レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
希白〜こはく〜(プロフ) - 絶対匿名03さんこんにちは！癒しをありがとうこざいます。続編移行のお知らせ(ページ42)の誤字報告をさせていただきます。保護対象の総数は4体でなく8体ということと夢主の名前の変換が出来ていない事をご報告させていただきます。 (2019年4月30日 16時) (レス) id: cba47ff50a (このIDを非表示/違反報告)
絶対匿名０３(プロフ) - うおがめさん» 報告感謝します。修正しました。 (2019年4月7日 22時) (レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
うおがめ(プロフ) - 誤字 報告41(ページ20) 資格→四角 (2019年4月7日 18時) (レス) id: 18693f0984 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絶対匿名０３ | 作成日時：2019年3月23日 15時
