保護対象１-fの発見 ページ19
ふと、故郷に帰りたくなる時がある。仕事で疲れた時、感傷的になった時、故郷の歌を歌った時。そんな気持ちもあるが故郷は遠く滅多に帰ることはできない為近場の似た場所に観光に行く程度で気を紛らわせている。今回もいつもと同じ目的でその国を訪れた。帰国の日。来る度に寄っている店の店主や近くに住んでいる子供達に手を振って別れるのも慣れた光景になっていた。
帰り際に通る道でふと小さな歌声が風に乗って聞こえてきた。小さくて突風が吹けば掻き消されるであろう声量ではあったがその子守唄にも似た優しい歌は懐かしさを感じさせた。その歌声に近寄っても人影はなく、身の毛がよだつ思いをしたがすぐ下を見ると変な生き物は高らかに歌っていた。
「………え？」
「…ゆっしゃ」
嫌そうな声で答えた生き物が再び歌い始めると空から一羽二羽と小鳥がおりてきてどこからかリスなども集まってきて変な生き物を囲んだ。その歌声を待ちわびていたかのように、そっと寄り添いながら歌われる歌は変な生き物とはいえ安心できる歌だった。そういえばと鞄から書類を取り出し丁寧な字で書かれた長ったらしい手紙を軽く読み直す。差出人のエーミールは速読ように赤線を引いてくれていたようでその部分には『餅みたいな生物がいた場所を書き留めそこに私の部下を呼んでください。その生物は傷つけないように持って帰ってきてください。後おみあげもください』と書いてあった。おみあげは置いておき連絡を手短に済ませるとちょうど歌が終わったようだった。犬やら猫やらも集まってきていたようでもう変な生物の姿は埋もれてしまっている。ぽろん、と軽い音がしてその方を掻き分けてみると古いギターが取り残されていた。それを何も考えずに持ち上げ左手で支え右手でリズムを取るように音を立てた。先ほどの曲を真似した、似通ったメロディを弾く。初めて聞くしわからない部分もあるがその辺はアレンジを加えた。
「……ゆっしゃ…？」
「なぁ、歌ってや」
渋々歌い始めるのに俺も合わせる。ゆったりした曲に合わせて風が吹き動物たちは耳を澄ませている。ふと横の生物を見ると太陽のような黄の瞳でどこか遠くを見つめていた。そうして自然と理解した。こいつも故郷が恋しいのだと。俺がより強く歌えば対抗心の強い相手は同じくらい声を張り上げてくる。歌声が遠くへ響いていく。俺も相手も一生懸命に声を枯らした。苦難の日々の先で穏やかに微笑んでいる、愛おしい故郷に届くことを願って。
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星空りゅな - ひえっ…ゆっぞむ可愛すぎませんか…？物凄くこの作品大好きです、更新頑張ってください！ (2019年5月3日 9時) (
レス) id: c5345c7420 (このIDを非表示/違反報告)
絶対匿名０３(プロフ) - 希白〜こはく〜さん» 報告感謝します。修正いたしました。 (2019年4月30日 16時) (レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
希白〜こはく〜(プロフ) - 絶対匿名03さんこんにちは！癒しをありがとうこざいます。続編移行のお知らせ(ページ42)の誤字報告をさせていただきます。保護対象の総数は4体でなく8体ということと夢主の名前の変換が出来ていない事をご報告させていただきます。 (2019年4月30日 16時) (レス) id: cba47ff50a (このIDを非表示/違反報告)
絶対匿名０３(プロフ) - うおがめさん» 報告感謝します。修正しました。 (2019年4月7日 22時) (レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
うおがめ(プロフ) - 誤字 報告41(ページ20) 資格→四角 (2019年4月7日 18時) (レス) id: 18693f0984 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絶対匿名０３ | 作成日時：2019年3月23日 15時
