＊＊ ページ16
.
両者の前に置かれた紅茶はもう何も映さなくなった。茶菓子に手を伸ばし始めるグルッペンを前に喉も乾き唇が乾燥するのもよそにこの話が早く終わらないかとそればかり思っていた。
「俺は別にこの傷について話しても良いと思っている」
「は？なんやお前、馬鹿なんか？」
苦そうな顔をして見せるとその顔が面白いと言いたげに笑われる。いや、こんな顔にでもなるだろ。敵兵によって片目を負傷し、しかもそれが書記長への熱意を証明するためだと話したらどんな目で見られると思ってやがる。
しかしグルッペンは、間違いじゃないのだから、と余裕そうだ。
「それに、俺がトントン先生に憧れていることなんて視線で感じてる奴もいるぞ」
「それでも公にすんのは俺らの地位と実績に関わりかねん。お前と国のためやぞ」
そういう時渋々此奴は、じゃあ今度に延期だ、と言った。この際延期になっただけでも良しとしよう。別に俺だって単なる憧憬を向けられているだけなら特に広めることを止めはしない。だが立場が、過去がそれを拒否する。
紅茶もなくなり茶菓子も食べ終えた。
そろそろ仕事に戻るぞ、と言うと彼は純粋無垢な青い瞳で笑った。
「そういえば、なんで目やったん？他でもよかったやろ」
「嗚呼、それはお前の目の傷がかっこよかったからだよ」
ーーーーーーーーーー
(トントンに憧れているグルッペン)
(グルッペンの狂気に悩まされるトントン)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 28人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
絶対匿名０３(プロフ) - 琴葉さん» 返信失礼致します。これはこれは。身に余るお言葉、恐悦至極でございます。私とてまだまだ表現力に練習の余地ありと思っておりますので。閲覧感謝いたします。 (2019年10月13日 20時) (
レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - 初めまして、突然のコメントをお許し下さい。ちぃ汰様の紹介から此方に飛ばさせて頂き、作品を拝読させて頂きました。続きを書いて下さったのも然り、どれも洗練された文ばかりで思わず時間を忘れ読みいってしまいました、これから影ながら応援させて頂きます。 (2019年10月13日 0時) (レス) id: fea4b79f15 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 絶対匿名０３さん» いえいえ、お暇があるときに返事して頂ければ充分です。読んでいただけて嬉しいです。こちらこそありがとうございました。素敵なお話でした。それでは準備出来次第リンクを貼らさせて頂きます。長々と失礼致しました。 (2019年10月12日 23時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
絶対匿名０３(プロフ) - ちぃ汰。さん» 返信が遅れてしまい申し訳ございません。作品のリンクに関しては問題ございません。むしろ此方から頭を下げて懇願します（ぺこぺこ）シリーズの新作も読ませていただいております。応援と参考の対象です。今回はありがとうございました。 (2019年10月12日 15時) (レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 拝読させて頂きました。素敵な続きをありがとうございます。宜しければこちらの作品のリンクを貼らせて頂いて是非紹介したいのですが如何でしょうか。作者様のご意向に添いたいので遠慮なく断って頂いても構いません。重ねてになりますがありがとうございました。 (2019年10月6日 23時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：絶対匿名０３ x他1人 | 作成日時：2019年10月5日 7時
