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とあるゆっくりたちの独白 ページ34

本音を言うと単なる同族嫌悪だった。



『ゆんやぁ』

「あ、こいつ今悪いこと考えためう。ケーキはあげなくていいめう」

俺がケーキをねだるフリをして置いてあった水を倒してやろうと企てているとその計画がわかっていたかのように水を遠くに置かれケーキも貰えなくなってしまう。
何故かこの人間には全て知られてしまう。
騙す技術と情報を頭に詰め込むことに手を抜いたわけではなかった。それでもなんどやってもこの人間を出し抜けない。


『ゆっぅ……!』


「そんな顔したら心根が見えるめう。
かわいくな〜い」


『ゆっ……』


要注意人物として真っ先に入った人間は『がいこうかん』として仕事を果たす人間らしい。
最初に見た時から苦手なやつだとは思っていた。その正体がひしひしと感じる同族嫌悪だなんてことは分かっていた。だが、それを認めるのは俺にはまだ大変なのだ。


「なんか企んでんな?また潰したるよ?」


『ゆぅ!』


今日も俺はこの人間を出し抜くすべを全知識を使って考えている。





ーーーーーーーーーー



言葉一つで救われるだなんて、僕は生涯で一度でも考えたことはなかった。



人間と最初に出会ったときのことを今でも思い出せる。食べるものも見つけてくれる人間もいない時間だけが長く長く感じた。ふと目の前の水の中に僕の姿が映った。僕が知らない世界で笑う。それから、僕の姿が搔き消える。すぐに水が全てを覆い尽くしたが、突然、体が水から離れた。体を押されて逆流した水が口の端からこぼれ落ちる。目を開ければ、僕を捕まえたのは人間だった。

嗚呼、捕まった。確か仕事は、友好的な関係がどうたらって。

思い出せる範囲内で仕事をした。覚えたように口角を上げて好印象を持たせるために笑った。ちゃんと笑えていたはずだった。それなのに人間はそっと僕を撫でて聞いた。


「なんで、そんな苦しそうに笑ってるん?」


その言葉が僕の中の何かを壊してくれた。僕が嫌々ながらそうしてるのを見抜いたのは彼が、僕と似ていたからなのかもしれない。
今、僕の前で好きな煙を吐いてくれている彼は、『だいせんせい』と呼ばれている。
そんな彼に僕が能力を見せたのは間違えだけではない。ずっと、最初に会った時から伝えたかった言葉があったから。

助けてくれて、ありがとう。

これからもよろしく、はまた別の機会に伝えられたらいいな、なんて丸くなってしまった自分を笑いながらまた彼の呼吸を食んだ。

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作者名:絶対匿名03 | 作成日時:2019年3月10日 21時

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