無気力なメカクシ団No.13の少女は烏野高校３年生なのです← if 【ハイキュー!!】【カゲプロ】 (ページ31)

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第６９話ページ31

『……さて、と。夏也、あれ持ってきた？』

「うん」

夏也は布手袋を嵌めて、
持っていた黒いスーツケースから、何かを取り出した。

「わ………」

それは黒光りする綺麗な宝石だった。
顔ほどの大きさで、光に反射して黒の中に沢山の色が見える。

『ブラックオパール。
石言葉は……ものすごくポジティブ』

「ものすごくポジティブ！？」

『いや、意味が。
カリスマ性、自信、柔軟性、革新的……

知ってる？
黒は何物にも染まらない力を秘めているの。
黒を纏うことで自分を保つことができる……』

妖艶に笑ったAの顔は半分がぼやけて見える。
はっきりと表情が読めない。
その奥の、真意も。

『さぁ、仕上げだ。』

夏也から石を受け取ったAは、踵を返して奥に進んでいく。
俺たちも後を追った。

そこは草原だった。
空は来たときよりも赤く染まっている。

草原の少し開けた部分に石造りの台がある。
まるでステージのように小上がりになっていて、
真ん中から大きく不思議な紋様が広がっていた。

台にはAだけが進んだ。
俺たちは入ることを止められたからだ。

中央へ歩んだAが振り替える。
頬には一筋、流れ落ちたものが太陽の光に反射してキラリと光った。

『……ありがとう、夏也。
こんな僕を支えてくれて……大きくなったね。
父様や母様がお喜びになるだろう。』

「ねーちゃん………？なに、言って…………………」

『もう、大丈夫。

あの惨劇が繰り返されることは無い。
あの事件から止まった日々も……また進めることができるんだ。

本当にありがとう、夏也。
僕の最愛の弟……』

「だから、さっきから何を………まさか」

酷く狼狽えた夏也がAの元に駆け出す。
今までで１番、優しく笑うAの元に。

ﾀﾞﾝｯ

けれども伸ばしたその手が、Aを掴むことは無かった。