卒業 《8》 ページ12
椿「よし、
私ができることは全部したから…」
と満足そうに鼻歌を歌いながら、
黒い大きい袋のチャックを開けて
椿「あとはこれに着替えて！」
とその中身を私の方に差し出した。
「えっ、これ…」
それは、
ふわっとしたシルエットの
ロングドレスだった。
胸の部分はブルーで、
オーガンジー加工がされた布の上に
花の刺繍が施されていて。
ウエストから下は淡いピンクで、
ふわっとして見えるのは
チュールが何枚も重ねてあったから。
肩あきで、
腕の部分はチュールのフリルがついていて。
セクシーすぎず、
こどもっぽすぎない、
素敵なドレス。
椿「素敵よね、これ、智が考えたのよ？」
「智くんが…？」
椿「そう。
うちのお店、
ドレスのデザインとかもやってるんだけど、
2ヶ月通い詰めてやっとこれができたの。」
「2ヶ月も…」
渡されたドレスにこもった、
智くんの想いを感じて。
ぎゅっと胸にそれを抱きしめる。
椿「あ〜っ、泣かないで泣かないで！
せっかくのメイクが崩れちゃう！」
「だって…っ」
椿「可愛い姿、見てもらいたくないの？
智に。」
「見て、もらいたいです…」
椿「じゃあ、泣くのは後！
今はドレス着て、智のところに行く！」
「は、はいっ」
ほぼ強制に近い椿さんの言葉で、
溢れそうだった涙は引っ込んだ。
手を貸してもらいながら着たドレスは、
やっぱりとても綺麗で。
鏡の中の生まれ変わったような自分を見て、
心なしか気分も上がった。
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作者名：KIRA | 作成日時：2018年11月26日 18時
