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「寒すぎる」
いつもなら改札を出て左に曲がるけど今日は右に曲がってカフェに入った。
扉を開けると広がる珈琲の香りと暖房の暖かさ。
寒暖差で風邪引くんだよって言ってたななんて北斗の言葉を思い出す。
「いらっしゃいませ」
「カフェラテ一つください」
「700円になります」
ぴったりで出したかったのにこういう時に限って100円足りなくて仕方なく千円札を出してお会計を済ませる。
「お席までお持ちしますので、こちらの札を机に置いてお待ち下さい」
そんなことまでしてくれなくてもいいのにと少し良心が痛む。
残った仕事を済ませようとパソコンを取り出して、カタカタと手を動かしてみる。
人気なのかドアの近くの席しか空いて居なかったから人が出入りするたび足元に冬の風が届いて膝掛け職場から持ってきたらよかったななんで後悔したりして。
ああ、風が来た。
どこかの席が空いたら移ろうと思っていると
「A、お待たせ」
なんて声が聞こえて
肩を叩かれて振り返ると北斗が来ていた。
「早くない？まだ頼んだカフェラテも来てないよ」
ああ、私って可愛くない。
あんなに会いたかった癖に。
「なんか、Aに早く会いたくてさ」
「うん... 私も会いたかったよ？」
きっとこんな言葉がずっと簡単に出たのは店で流れるクリスマス仕様の音楽のせいだ。そうすることにした。
「かわいい.. 俺もなんか頼んでくるよちょっと休憩して帰ろ？」
「うん、待ってる」
そういって隣の席に自分のコートをかけてレジに向かう北斗。
左手に光る指輪になんとも言えない気持ちになる。
あんなにかっこよくて素敵な人と結婚できる私ってきっと世界で一番幸せなんだろうと思った。
また、足元に風が吹いた。
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作者名：みりん | 作成日時：2020年12月5日 3時
