【文スト】異能力？いいえ、霊能力です肆

「揚げ出し豆腐が食べたい。…この台詞二回目な気が」 ページ33

「ん…」
「A？」
「ん〜…ん、あれ…？」

目を覚ませば作之助の背中。
縛り付けられていた手足は自由になっている。

「作之助…幻の虹色の揚げ出し豆腐は？」
「…どんな夢を見てたんだ」

あれは夢だったのか。食べておけばよかった。
思えばジャングルの奥地に揚げ出し豆腐が用意されていた時点で夢だったな。

「ここどこ？」
「今地上に出る処だよ」
「あ、太宰さん、中原さん。！夢野君…！」

中原さんにおんぶされてる夢野君は、まだ起きていない様だ。

「呼吸はある。大丈夫だ」
「よかった…」

手を伸ばして夢野君の頭を撫でた。
子供らしく柔らかい髪が心地いい。

「つか、クソ太宰、その人形寄越せ」
「駄ー目。万一に備えて私が預からせて貰うよ」

太宰さんの手には夢野君の人形。
確かあれが、夢野君の能力発動の源。

『こんな能力、欲しいと思った事なんて一度もないのに…！』

夢野君の声がリフレインした。

「そんな顔をするな、A」
「アンドレ…」

一体どんな顔をしてたのか。
ぽんとアンドレの手が乗せられた。

「異能力者であって、望ん通りの能力を持っている者の方が少ない」
「…望まない力に苦しむっていうのは…私も少し分かるんだ」

他の人に見えないモノが見える。
たったそれだけのこと。
たったそれだけでも、人は受け入れない。
だから、初めてできた私の友達は、”人”では無かった。
小さな頃は、人の方が私には化物に見えた。

「この貧弱野郎！」
「ちびっこマフィア」
「社会不適合者！」

シリアスをぶち壊す様に聞こえてきた悪口の押収。

「あの2人、仲いいね」
「そうか？」
「あれだけ悪口が云えるって事は、それだけ互いの事を知ってるって事でしょ」
「付き合いは長いからな」

喧嘩するほどなんとやら。厭よ厭よも好きのうち。
なんか、あの二人はそんな関係の気がする。

「その程度の悪口じゃそよ風にしか感じないねぇ」
「ぐ…」

包帯無駄遣い装置と言って太宰さんにちょっとダメージを与えた国木田さんの方が、中原さんよりは悪口のセンスがあるってことかな。

「手前が泣かせた女全員に今の住所伝えるぞ」
「ふん、そんな事…………それはやめてくんないかな？」
「もう生霊として20人くらい背中にしょってるから手遅れだと思う」

みんなが一斉に私の方をみて固まった。
私、何か拙い事言っちゃたかな？

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