手鏡7 ページ48
「心配させて悪かった。だが、Aが彼女の前に飛び出した時に俺の気持ちを分かって貰えただろう?」
「っ、もう、しないから…ごめ、なさい、だから…!」
もう、作之助もこんな事しないでー!
涙はまだ枯れない。
「似た者兄妹だな」
「俺はアンタの息子になった覚えはないぞ。…それより、ジイド何か拭くものをくれないか?手に血が付いてしまった。このままじゃ、Aに触れん」
アンドレからハンカチを受け取った作之助は、血を拭きとった手で背中を摩ってくれた。
「お茶を飲みに寄ったのだけれど、また今度にするよ。樋口君は、私が責任をもって連れて帰るから安心し給え。樋口君が殺めてしまった彼女も、此方で手を回しておくよ」
「…森さん、あの…樋口さんは…」
「私が、彼女に何か罰を下すのではと心配しているんだね。けれど、それはAちゃんが踏み込むべきではないよ」
眉をひそめながらも笑顔を崩さないまま答え、森さんは何処かへ電話を掛けた。たぶん、迎えの車をお願いしたんだろう。
「Aとお茶したかったけど、残念…」
「また何時でもおいで、エリス。森さんも。今日はありがとうございました」
「ふふ、では次の機会にまたお邪魔させて貰うよ」
樋口さんは到着した黒服さん達に抱えられて、森さんと一緒に帰った。
依頼者の女性も、回収していった。
「掃除をしなければならないな」
「…ん」
「今日は、依頼をキャンセルして休みにするしかないな」
「…ん」
「…今日は、外で食事をするか」
「………ん」
一件落着。
なのに、全然すっきりしない。
床を染め上げた赤をただ見つめた。
霊や妖と戦っていても、血は見るし浴びる。
でも、人が人を傷つけて流れる血は、私が普段見慣れている物とは全然違う。
同じ赤なのに、全く違って見えるのだ。
「A、一度シャワーを浴びて着替えてこい」
「…それは、作之助が先に」
私よりも作之助の方が沢山血が付いてる。
「いや、先にAが行け」
「……分かった」
有無を言わせない目に頷いて、事務所を後にした。
アンドレも作之助も、私に気を使ってくれた。
しっかりしなくちゃ。
森さんや、龍之介、中原さん、元マフィアの太宰さんも、あんな光景は日常だったんだろうか。
そう思うと、ほんの少しだけ、彼等を怖く感じてしまった。
「シャワー、終わったよ。…二人で掃除したの!?私手伝ったのに…」
「お帰り」
「気にするな」
事務所に戻ればすっかり赤は消えていて、笑顔の二人が出迎えてくれた。
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をたく - 夏目友人帳とコラボでこの作品出してほしい (2020年1月3日 4時) (レス) id: cd1a846ab2 (このIDを非表示/違反報告)
光牙 - 怪奇症候群を思い出すなぁ... (2018年8月16日 20時) (レス) id: bfcb6bfd1c (このIDを非表示/違反報告)
amato(プロフ) - ルルさん» コメントありがとうございます!猿夢はグロいですよねwしかも、元ネタ読むと自分も同じ夢を見るという噂が…。まぁ、私見てないんですけど (2017年8月31日 6時) (レス) id: 6e722ca549 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - ヒャ、猿夢はトラウマです…うぅ…(長い間見てなかったです。すみません) (2017年8月30日 5時) (レス) id: 622016f6ff (このIDを非表示/違反報告)
amato(プロフ) - にぃさん» ありがとうございます! (2017年8月27日 9時) (レス) id: 6e722ca549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:amato | 作成日時:2017年8月16日 22時