【文スト】異能力？いいえ、霊能力です参

手鏡2 ページ43

「女性ばかりを狙った通り魔事件かぁ…」

ニュースを着ければ、朝からその報道ばかりだ。
被害者は既に10人を超えていて、中には消えない程深い傷を付けられた女性もいるとか。
女性ばかり狙われていることから、犯人は男性と考えられているらしい。軍警は同一犯による犯行として捜査してるとの事だった。

「Aも気を付けろよ」
「うーん…」

無差別という言葉に、少し不安を覚える。

「こんな事件、江戸川さんならさっさと解決できそうなものなのにね」
「殺人事件じゃなければ、名探偵は動かないと聞いた」

選り好みしすぎだろ。
自業自得による依頼を悉く断っている私が言えた義理じゃないが。

「そういえば、今日アンドレは？」
「…買い物に行った」

あ…。
例の約束今日だったんだ。
以前、偶然ショッピング中に遭遇した見た目は町医者、素顔は某組織首領の森さんとエリス。
そこで意気投合してしまったのが、うちのアンドレと森さんだった。
今度、素性や立場は抜きにして服を買いに行く約束をしたらしい。
誰の服かは云わないでおく。

「…おじ様二人で女の子の服を選ぶのか…」
「…軍警に職質されなければいいな」

作之助くらいの年齢なら、ギリセーフなんだろうか。

「作之助、依頼は？」
「今日は3件メールが届いてる。電話で心霊相談の予約が2件だ。1件は10時から、もう1件は午後2時から」
「まだ時間あるねぇ。…んー、メールの方は…なにこれ、全部おんなじ内容だ」

ネットで開いているサイトから、メールで依頼出来るようにしている我が事務所。
そこに届いた3件の依頼は、どれも「娘や妻、妹が鏡を持ってきてから様子がおかしい」と云った内容のモノだった。

「鏡…？」
「また、付喪神の類か？」
「うーん…森さんの例が特殊だっただけで付喪神ってのは、そもそも人を操ったりする物じゃないんだけどな」

実体のある妖は、自分の身体を使って人に害を及ぼす方が多い。
人に憑りついてどうこうするのは、妖もゼロではないが、実態を持たない霊が原因の事の方が多い。

「でも、こんなポ〇モンの大量発生みたいに同じ依頼が重なるなんて…」
「なんだそれは」
「あ、うん、作之助は気にしないで」

この世界にないのかな、ポ〇モン。自転車で草むらを駆けていたのが懐かしい。
そもそも、古くから続く銘家であればともかく、一般家庭に百年以上保管されている物がある事自体が珍しいこの現代。

「10時までには1件くらい回れるかな」

取り敢えず、行ってみますか！

手鏡3→←手鏡1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す