土地神3 ページ41
「ふぅ…やっと、何とか形になったね」
空が白んできた頃、大沼様のお社は漸く完成が見えた。
「あ、時間だ。じゃあ、作之助、アンドレ、残りは任せてもいい?」
「あぁ、大丈夫だ」
「本当に二人で行くのか?俺も…」
「作之助まで来たら、仕上げがアンドレ一人になるでしょ」
「…貴様等、何の話をしている」
私達の話に置いてけ堀だった芥川君が、問いかけた。
「私と芥川君でお供え物用意しに行くんだよ。大沼様は川魚が好物で、お店に特別に早朝に用意して貰えるように頼んであるの」
「何故僕が」
「貴方が壊して大沼様を困らせたんだから当然でしょうが」
ほら、いくよ!と彼の手を繋いで結界から抜ける。大沼様がぐるる…と鳴いて見送ってくれた。
少し食いしん坊過ぎる処があるが、元来穏やかな方だ。新しいお社の完成が見え、お供え物も貰えると分かり、芥川君を襲った時の怒りは殆ど消えているようだ。
「おい、何時まで繋いでいる」
「え、あぁ…ごめん」
彼が逃げないように繋ぎっぱなしだった手を放す。
「…っ、離せとは言っていないだろう」
「いや、どっちだよ」
あんな言い方されれば、離せと云われているのと同じだと思うんだけど…。
「あ、あのお店だよ!」
海水魚なら其処等のお店で簡単だが、大沼様の好物は淡水魚。取り扱っている店を探すだけでも割と大変だった。
「ありがとうございます!…芥川君、半分持ってね」
「何故…っ、貴様…!」
睨まれても知りません。川魚がたっぷり入った袋を押し付ける。
自分で蒔いた種だ。依頼とはいえ、助けてあげてるのだから感謝してほしいくらいだよ。
「そういえば、私の事攻撃してこなくなったねぇ」
「突くな」
芥川君が作業中もずっと脱がなかった黒外套をつんつんすると怒られた。作業中くらい脱げばいいのに。アンドレだって腕まくりしてたし、作之助なんてランニングシャツ1枚だったぞ。
「…無駄なことはせぬだけだ」
「無駄…?」
私の結界はあくまで霊障を防ぐためのものであって、物理的な攻撃に対しての防御力はたかが知れている。しかも、此処には作之助もアンドレもいない。私を殺るなら絶好の機会だと思うんだけど。
はて…。
「おい」
「わっ!」
突然、腕を引かれて、引き寄せられた。
なるほど、あのまま歩いていたら電柱に激突してたのか。
「ありがとう、芥川君!」
「…ふん、間抜けめ」
笑顔を向けると、顔をそらされた。嫌われてしまったかな。
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銀狼(プロフ) - ゾッとして怖いって思っちゃうけど次のページの手が止まらない!2周目! (2019年12月2日 20時) (レス) id: fe6437d156 (このIDを非表示/違反報告)
泉桃花クラスタ - すごく面白くて、毎日楽しみにしています。更新頑張ってくださいね!楽しみにしています! (2019年3月30日 17時) (レス) id: 1a879c682f (このIDを非表示/違反報告)
カナネ - はじめまして、いつも読ませて貰ってますm(__)m 今また始めから読み返していて…間違えてたらすみません!コトリバコ5に誤字があったような気がします(>_<) (2018年3月22日 15時) (レス) id: 2f304636ee (このIDを非表示/違反報告)
amato(プロフ) - 猫勇者(ヒナっち)さん» 怖いと思って頂けたら書いた甲斐がありますね^^ありがとうございます (2017年8月21日 17時) (レス) id: 6e722ca549 (このIDを非表示/違反報告)
猫勇者(ヒナっち) - あ、更新頑張ってください (2017年8月21日 12時) (レス) id: 3b5a43403c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:amato | 作成日時:2017年7月23日 16時