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『マイナスからのスタート』 ページ38

side:太宰

仕事を終えた彼女は、織田作を残して先に帰宅した。

「ねぇ、織田作」
「なんだ」
「彼女、面白いね」
「Aか、余りいじめてやるなよ。霊的なモノの怨念だとかには滅法強いが、生きた人間の悪意だの殺意だのにはすごく…弱いんだ」
「…なるほどね、それで織田作が守っているのか」

初めて会った時は、少し殺気を向けただけで、小動物の様に震えあがり瞳を潤ませた彼女。
余りの弱弱しさに少し拍子抜けした程だ。
次に会った時は、私と友人を守るように刀を構えて怪異に立ちはだかった凛とした彼女。
初めて会った時からは想像もつかない、強い瞳を怪異に向けた。

「…Aちゃんはどんな娘だい?」
「一言じゃ言えないな。…ただ、Aの笑顔には不思議と勇気づけられる」

お前に会いに来たのも、Aの後押しがあったからだと教えてくれた。
何故だろうね、彼女を思うと胸がざわつく。
否、私はこの感情を知っている。しかし、この感情を女性に”本気”で感じたのは初めてかもしれない。

「織田作は、4年間あの子と一緒なのだよね」
「そうだ」
「付き合ったりはしていないのかい?」
「…いや、Aは俺とジイドの事を家族と言っているからな」
「Aちゃんはそうでも、織田作は?」
「分からん。女に恋をしたことなんて無いからな。だが、Aを特別には思っている」
「そうか、織田作が恋敵になったら大変そうだね」

親愛にせ、恋慕にせよ、自覚していないなら好都合。
悪いけど、この私を本気にさせた女性に会えたのだから、いくら織田作でもこのことで譲歩なんてしないよ。
悠長にしていると、私が先に貰うー。

「太宰、Aが好きなったのか?」
「うふふ、さぁね?でも、とても興味を持っているよ」
「太宰でも、Aを傷つけるなら許さない」

真剣な眼差しに、私は目を細めて答える。
別に、傷つけたいとは思わない。彼女にはきっと泣き顔は似合わないだろうから。
しかし、もっと色々な表情や姿を見たいとは思う。織田作が知っていて、私が知らないのは不公平だろう?
小動物の様に怯える姿、侍の様に凛とした姿…もっと色々なAちゃんを知りたい。

「でも、彼女には嫌われてしまったようだね」
「仲直りしただろう」
「そうなのだけれど」

仲直りはした…が、Aちゃんはまだ少し怯えていた。脅した私が悪いのだけれど。

『マイナスからのスタート…だね』

悪くない。

「あの娘は、私が貰う」

宣戦布告は酒と共に飲み下された。

土地神1→←「私は裏の人間ってだけで嫌うほど、視野狭くないです!怖いけど!一般人だから!」



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銀狼(プロフ) - ゾッとして怖いって思っちゃうけど次のページの手が止まらない!2周目! (2019年12月2日 20時) (レス) id: fe6437d156 (このIDを非表示/違反報告)
泉桃花クラスタ - すごく面白くて、毎日楽しみにしています。更新頑張ってくださいね!楽しみにしています! (2019年3月30日 17時) (レス) id: 1a879c682f (このIDを非表示/違反報告)
カナネ - はじめまして、いつも読ませて貰ってますm(__)m 今また始めから読み返していて…間違えてたらすみません!コトリバコ5に誤字があったような気がします(>_<) (2018年3月22日 15時) (レス) id: 2f304636ee (このIDを非表示/違反報告)
amato(プロフ) - 猫勇者(ヒナっち)さん» 怖いと思って頂けたら書いた甲斐がありますね^^ありがとうございます (2017年8月21日 17時) (レス) id: 6e722ca549 (このIDを非表示/違反報告)
猫勇者(ヒナっち) - あ、更新頑張ってください (2017年8月21日 12時) (レス) id: 3b5a43403c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:amato | 作成日時:2017年7月23日 16時

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