ひとりかくれんぼ2 ページ33
side：織田作
ピンポーン…
「いないのか？太宰ー！」
扉の外から呼びかけ、もう一度呼び鈴を鳴らすも結果は同じだった。
Aからの後押しもあって、今私は武装探偵社の社員寮にある太宰の部屋の前にいる。
「太宰なら、昨日から連絡がつかん。大方、またどこかで川にでも流されているのだろう」
太宰のことを部屋の隣人に尋ねれば、帰ってきたのはこんな答えだった。
太宰ならあり得るから困る。
今日は諦めて帰ろうかとも思ったが、一応ドアノブを回してみると鍵が空いていた。
「不用心だな…太宰、いるのか？」
扉を開けて呼んでみるも返事はなく、気配もない。本当にいないようだ。
蟹缶が大量に床に転がっている部屋の真ん中に置かれた、丸い卓袱台。
その卓袱台に開かれたまま置かれた分厚い本に、酷く違和感を感じた。
「なんだこの本…？」
開かれたページのタイトルには、”ひとりかくれんぼ”と記されていた。
「それは、残念だったね」
「あぁ、だがもういつでも会えるからな、また次の機会に行くさ」
あれ以上太宰のいない部屋に長居しても意味がなく、霊能事務所に帰ってきた。
「せっかく太宰さんが喜びそうなお土産も用意したのにね」
「昼食ができたぞ」
「アンドレのオムライスー！」
興味が昼食に移ったAを見て、小さく笑い、私も続いて席に着く。
「あぁ、そうだ。A、ジイド、ひとりかくれんぼって何か知ってるか？」
「否、聞いたこもないが…そもそも一人でかくれんぼなどできないだろう」
「そうなんだが、本に書いてあってな。気になって」
「呪術」
オムライスを飲み下したAが呟いた。
「それ、呪術の一種だよ。世間じゃ、交霊術として伝わってるみたいだけど。しちゃだめだよ…はむっ、むぐむぐ…」
Aの言葉に、嫌な汗が伝うのを感じた。
まさか、太宰は…したんじゃないだろうか。その呪術を。
「それは、どんな呪術なんだ？どうしたら、終わらせられる！？」
「ど、どしたの、作之助…」
くそ、なんでもっとしっかりあの本を読んでこなかったんだ…！
いつも、私は後悔ばかりだ。
「えっと…たいてい呪術っていうのは他人に向けて行うものだけど、ひとりかくれんぼは自分で自分に向けてやるものなんだ。終わらせる方法は、予め用意しておいたお酒か塩水をぬいぐるみに吹きかけて『私の勝ち！』って3回言うんだけど…」
酒…？そういえば、太宰の部屋には酒瓶も転がっていた気がする。
封の開いていない、真新しい酒瓶が…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 774人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
銀狼(プロフ) - ゾッとして怖いって思っちゃうけど次のページの手が止まらない！2周目！ (2019年12月2日 20時) (
レス) id: fe6437d156 (このIDを非表示/違反報告)
泉桃花クラスタ - すごく面白くて、毎日楽しみにしています。更新頑張ってくださいね！楽しみにしています! (2019年3月30日 17時) (レス) id: 1a879c682f (このIDを非表示/違反報告)
カナネ - はじめまして、いつも読ませて貰ってますm(__)m 今また始めから読み返していて…間違えてたらすみません！コトリバコ5に誤字があったような気がします(>_<) (2018年3月22日 15時) (レス) id: 2f304636ee (このIDを非表示/違反報告)
amato(プロフ) - 猫勇者(ヒナっち)さん» 怖いと思って頂けたら書いた甲斐がありますね＾＾ありがとうございます (2017年8月21日 17時) (レス) id: 6e722ca549 (このIDを非表示/違反報告)
猫勇者(ヒナっち) - あ、更新頑張ってください (2017年8月21日 12時) (レス) id: 3b5a43403c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：amato | 作成日時：2017年7月23日 16時
