【文スト】異能力？いいえ、霊能力です

コトリバコ3★ ページ17

「娘さんに憑いているのは、女性ではなく水子の霊です。どうぞ、娘さんに聞いてみてください」

私の声に、一斉に現場の人たちがやつれた女性に注目する。

「…た、たしかに…赤ちゃんの泣き声が、聞こえます。毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩…！！！」

錯乱した女性を、お母さんが抱きしめてなだめる。
あれは、だいぶ精神的にもまいっちゃってるな…。

『なんと、右京氏の発言ではなく、電話をしてきた謎の人物の方が正しいことが判明しました！』
『な…な…』

女性リポーターが高らかに告げ、右京とかいう名前の自称霊能力者の顔は引きつっている。

「お母さん、私は霊能事務所の者です。そこにいる詐欺師ではなく、私達に依頼するのであればすぐにでもそちらに向かいます」
『何を言っている！奥さん、こんな得体のしれない奴を信じてはなりません！娘さんは必ず私がお救いしましょう』
「霊視もまともにできないペテン師が何言ってんだ。…そこにいる詐欺師を信じるならお好きにどうぞ。でも、娘さんは近いうちに死にますよ」

私の言葉に現場が凍り付いたのが分かった。

「A、本当なのか？」
「うん、早ければ今日、明日にでも死ぬ」

作之助との会話は向こうには聞こえていないが、真実だ。

「もう一度言います、お母さん。娘さんに憑いている霊を見破ったのは、そこにいる詐欺師ではなく、私です」

静かに受話器越しに告げれば、娘を抱えたまま女性が叫んだ。

『お願いします！娘を、娘を助けてください！』
「わかりました。では、依頼料ですが…そこの詐欺師に支払われる額と同じだけいただきます」
『わ、分かりました！お支払いします！』
「依頼成立ですね。すぐに向かいますので、10分ほどお待ちください。…それと、テレビ局にはできればお引き取り願いたいです。特に女性の方は。…残っても構いませんが、何か起こっても私達は依頼人のご家族しか守りませんので、自己責任でお願いします」

それだけ言うと、受話器を下した。

「さて、3人とも準備はいい？」
「勿論だ」
「いつでも行ける」
「じゃあ、前に説明した通り、現場では前に決めた偽名で呼んでね」

再度注意事項を確認して、よし行こう！となったとき、坂口さんから制止がかかった。

「待ってください。偽名とはなんですか？私は聞いていませんが…」
「あれ、ごめんなさい。坂口さんには説明してなかったっけ？」

坂口さんの顔が、さっきの詐欺師並みに引きつっていた。

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