【d!】物語の主役は【短編集】 (ページ8)

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生まれながらに彼女に備わったこの特別な力の存在は、彼女とその両親であるこの国の王とお后様、そして幼馴染であるウツしか知らない。

だからといってこの力を知られているせいで嘘を暴けないだといった事はない。現に、両親の小さな嘘やごまかしなんかも見破れなかったことがないのだから。

「サンタさんからプレゼントだぞ！」

『......お父様、クリスマスプレゼントありがとうございます』

こんな具合に。

そんな完全無欠に見えるに思えるこの能力が、何故彼にだけ効かないのか。今日までずっと考えているのだがまったく原因を見つけられていない。

ウツという男は、「詐欺師」と呼び名がつくほどの嘘の名人であった。中には「世界一の嘘つきだ」なんて呼ぶ人さえいるほど。
彼の嘘に騙されてきた人間は数知れず。何人の女を誑かしてきたことだろう。両手では到底収まらないと、こんな噂は絶えずAの耳にも入ってきていた。この間見たのと違う女と歩いていただとか、夜更けに城下の家に出入りするのを見ただとか、そんな話が次から次へと飛び交う男である。

「今日も綺麗やね」

「君だけを愛してんで」

「世界で一番可愛いわ」

こんな歯の浮くような言葉をどこの誰にでも言っているらしい。似た様なことを自分も言われている。

そんな話を聞いているからこそ、ウツ・レイラーという男がにへらと笑いながら自分に吐く言葉たちがお世辞や嘘であることなど理解しているはずなのに、これがまたどうしてか力が発動しないのだ。毎日のように捌いている外交官やら他の国の貴族なんかの嘘は一発で見抜けるというのに。

ついぞその理由がわからなかった私は、最終手段を使う事にした。本人に聞いてみよう。私にこんな不思議な力があるのだ、きっと彼にも似たように「嘘を見破れないようになる力」とか、そんな物が備わってるに違いない。今までずっと隠していたのだろう。きっとそうだ。