彼女の異能、不明。 (ページ2)

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目が覚めると、とある建物の天井が目の前に広がった。
見覚えの無い場所、見覚えの無い布団の上。

全く知らない場所に、少し不安が沸き起こる。

一体、ここは何処なのだろうか。
一度起き上がり、少し周りを見回す。

だがしかし、何も分からない。

どうしようか。

いっその事出ようかなとも考えた。
だってここは外の世界。何があるのか分からない。
私とは縁のない、光り輝く世界なのだから。
やっぱり、逃げ出すなんて考えるものじゃないな。

そっと、布団から抜け出す。
と、ほぼ同時に扉を開ける音が聞こえた。

一体、何だと言うのだろうか。

私は少し身構える。

そして扉はカチャッと無機質な音を鳴らしながら開く。

太宰｢おや？起きたのかい。気分はどう？｣

扉が開くと共に入って来たのは男性だ。
やけに顔が整っている。が、所々包帯が見える。
……初対面の人だし、あまり深く入ってはいけないだろうな。

とりあえず、挨拶しなくては。

『……どうも、初めまして。えっと……。』

太宰｢……嗚呼、これは失礼。私の名前は太宰治。名字でも下の名前でも構わない。好きに呼んでくれ給え。｣

成程、太宰治さん。これからは太宰さんとでも呼ぼうかな。
私は太宰さんを見上げる。身長高いなぁ。

あ、そうだ。私も自己紹介しなくちゃ。

そう思い、自分の事を話そうとする。

『私は……。わた、し……は……。』

しかし、何も出てこない。
話そうとしているのに、何も思い出せない。

名前、何だっけ。年齢……歳はいくつだろうか。
……私は何で、この人と出会ったのだろうか。

必死で探す。記憶を辿ろうとする。
でも、辿ろうとする記憶そのものが無い。

私の記憶は、空っぽだったのだ。

太宰｢……真逆、とは思うが、記憶が無いのかい？｣

太宰さんは私に話しかける。

『……私は、誰、ですか。』

こんなこと、聞いても太宰さんには分からないはずなのに。
何で、何で。

誰か、助けて。

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