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_百八訓 ページ13

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変わっていないのはお前だけ。そう言って神楽は神威の崖に向かって投げた。


「パピーにおいていかれてベソかいてた頃と、マミーの前では強がってた頃と」


一番彼の隣にいて見てきたのは神楽()だ。

父が家を出た後に降り注いだ雨に打たれて、涙か雨水だか分からないほど濡れていたその後ろ姿も。
病弱な母親の前では無理して強がって笑っていたその横顔も。

「何も変わらない」神楽がそういった直後、砂埃で見えなくなっていたそこから神威がこちらに向かってきた。


「マミーにおいていかれて……、みんなに置いていかれてベソかいて強がってるだけの、ただの泣き虫の私の兄貴アル」


右と左の拳がミシミシと音を立てて軋む。男と女の差はあるであろうに、神威に食らいつく神楽。


「バカ兄貴。私はもう、お前の隣で一緒に涙を流すだけの妹じゃない。お前と一緒に、血を流して戦える!!」


互いに頭突きをしてゴッと鈍い音と共にグラリと倒れるが、足に力を入れてまた殴り殴られ、蹴り蹴られる。傷とはまた違った痛みに耐えながら、家族を護るためにその拳を振るう神楽。

星海坊主の脳裏に思い浮かぶのは雨の日に傘をさして自分を見送る神威の姿。そして、兄は家を出て母親をもいなくなりひとりぼっちになりながらも自分をまた見送る神楽の姿。



「……めろ」

「…………」


星海坊主の小さな声に、阿伏兎の数歩前という距離があろうと聞こえたその声。少しすればハッキリと「やめろ」という声が聞こえる。


「もういい、やめてくれェェェ!!」


二人を止めに入ろうと駆け寄る星海坊主。だがその直後。ザワッと、嫌な気配が背後から伝わり阿伏兎は上を見上げた。
そこには彼らを見下ろすとある男の姿。Aも阿伏兎とは少し遅れて男_虚の姿を確認すれば彼の方を見て叫んだ。


「神晃!」


Aの声により気づいた男の存在。その時には既に虚は崖を下って神威に向かって行く。

星海坊主が神威を横から突き飛ばし、Aは神楽神威の二人の前に立つ。次の瞬間、彼の義手である左腕が地面に落ちた。


「パピィィィィ!!」


空に浮かぶ艦の攻撃により三人が立っていた地面は崩れ始める。
神威は咄嗟にAへと手を伸すが、あと少しのところで降り注いだ大きな崖が彼女との距離を離したのだった。

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設定タグ:銀魂 , 第七師団 , 夜兎家族   
作品ジャンル:アニメ
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波璃 - 3作品目おめでとうございます!今作も面白いお話を期待しています!更新頑張ってください!! (2020年5月21日 23時) (レス) id: a6841af2ef (このIDを非表示/違反報告)
運動系引きこもり(プロフ) - わーー!!!待ってました!!ありがとうございます楽しみです!!更新頑張ってください!(ありきたりな言葉かもしれませんが本心です笑) (2020年5月21日 17時) (レス) id: 711990e728 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なな | 作成日時:2020年5月17日 13時

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