温厚篤実だなんて誰が言った【緑谷出久】 (ページ18)

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18.硝子の破片ページ18

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インターン。治崎との一件が終わり退院と警察との事情聴取が終わってハイツアライアンスに戻ってきたのはもう日が落ちた後の事だった。

「いずく……？」

久しぶりに帰ってきた第二の家をみんなと眺めている時、後ろから声がする。振り返るといつもと違って全身黒のスエット姿のAちゃん。パワーローダー先生考案の眼鏡をかけていても見慣れてしまえば割と分かってしまうものだ。

「いずぐぅううう」
「えっええ……！？」
「馬鹿コノヤロウ〜！お前死んじゃうじゃんっ！自分大切にしろこの馬鹿野郎〜！！」

うわーん！と滝のように大泣きしながら肩に顔を埋めてくるAちゃんにされるがまま、ぬいぐるみかのように強く抱きしめられた。

突然の事でえ？とかへ？とか小さい声ばかりか漏れて来る中、引き剥がそうと触れた手が異常なくらい暑く火照っている。
落ちた眼鏡を拾おうとしたのかしゃがんだAちゃんが力なく地べたに座り込んでしまった。

「緑谷、この女子誰だ？」
「えっ…と……」

そうだ。今をときめく人気アイドルに幼馴染、しかも男がいるなんてバレたら……。
少し前に炎上ごとには気をつけていると本人の口から聞いた。下手に僕が口を開けばAちゃんに悪影響だ。

「さ、むい」
「……あ！そうだよなんでここに…っそれよりリカバリーガール＿＿」
「藤原さんどこ行くんですか！まったく」

またまた出てきた発目さん…と僕と同じぐらいの大きさのロボット。ロボットは僕が抱えていたAちゃんの方へ手(？)を伸ばし、そのまま優しく抱えられた。

「藤原さん高熱が続いてテンションがおかしくなってるんです。今も緑谷くん帰ってきたんじゃないかって話したらすっ飛んでっちゃって」

心配してましたよ、と付け加える発目さん。
苦しそうに息を吐く幼馴染はうっすらと目を開けて僕を見た。

「いずく…」

そんな悲しい顔させるつもりなんてないのに。涙の跡がハッキリと残る目元に気づいて手を伸ばしかけた時、リカバリーガールの大きな声が聞こえる。

「まったく！じっとしてなって言ったらすぐこれだよ。これじゃあ治る風邪もなおりゃしないさね」
「じゃあ私は藤原さん連れていきます！」
「しっかり寝かすんだよ！」

嵐のように過ぎ去って行った幼馴染に、棒立ちの僕。

「あっ…」

地面にはいつの間にか踏んでしまってレンズの割れた眼鏡が落ちていた。

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