温厚篤実だなんて誰が言った【緑谷出久】 (ページ15)

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15.泣き虫ページ15

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大阪出張が明けた次の日、睡眠時間たったの三時間弱で教室に向かう。しかも午後は撮影があるから早退だし…、

普通に暮らしてたらこんなことにならなかったなとたまに後悔する時もある。今みたいな時だけだけど。

「久しぶり」

インターンはまだ続いてると思ってたけど、なぜか学校に来ている幼馴染の後ろ姿を追って話しかける。
振り向いた時の赤くなった目元を見て、思わず腕を掴んだ。

「何があったの」
「……っ、ううん大丈夫」
「また勝己？それとも違う人？」
「Aちゃん」
「そう言えば女子にデクって言われてたね、まさかとは思えないけどアンタ……」
「違う違う！麗日さんは関係ないよ…！」
「じゃあなんで……！」

消えても答えないで、インターンで行き詰まってるとだけ教えてくれた。

……嘘ばっか。そんな嘘、あたしに通用すると思ってんのかよ。

「……これ、貸してあげる」
「何？これ」

いつも肌身離さず持ち歩いてる緑色のお守り。大きなライブの前とかテレビの生中継とかで心落ち着かせるためにあたしの心のお守り。

「ヒーロー、なるんでしょ。挫けず頑張りなさいこの泣き虫」
「……ぅん！」
「ブスが更にブス」

酷いよぉ！と大きな目に涙を貯めながらお守りを右手で握り、お礼を言って教室に戻って言ってしまった。

……何だろう。この疾走感。胸がぽっかり空いてるみたい。

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