温厚篤実だなんて誰が言った【緑谷出久】 (ページ1)

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1.幼馴染が知らない間にページ1

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「ほら鞄持ち。ちゃんと働きなさい」

「何も無いとこで転ぶとか鈍臭すぎウケる」

「今どき腰パンとかダサくね？」

幼稚園小学校中学校。その十年間以上僕は一人の女の子に振り回され続けていた。

かっちゃんとはよく喧嘩してたし、学校では女王様みたな態度。口は悪いしちょっと暴力的。だけど誰にでも平等に優しい。
良くも悪くも裏表がない性格にみんなは引かれたんじゃないかな。中学の時一人でいる姿なんて見たことない。いつも人に囲まれていた。

かっちゃんみたいな感じじゃないから嫌われてる訳では無い…、とは思ってる。本人がどう思っているかは知らないけど。

「…あれ？まだ帰ってないの？」
「Aちゃん！先生からカーテン付け替えて欲しいって頼まれちゃって」
「あの押し付け野郎か。そんなの断ればいいのに、って。アンタにそんなこと出来ないか」

手伝ってあげる、と差し出された手。
からかわれ、いじられ続けてきたけどこうやって話しかけてくれることも優しいところもかっこいい。僕の身近な憧れの一人だった。…しかし、

＿＿…容姿端麗、温厚篤実、長い青がかった黒髪が特徴的な美少女。笑顔は可愛らしく人の目を簡単に奪ってしまう。

＿＿アイドル総選挙一位。藤原 A。

などと言われているのが高校生の幼馴染。意味がわからない。あんなに腹黒なのに何が温厚篤実だ！真逆だろ！と画面でAちゃんについて話すメディアに向かって叫びたい。

『私がここまでこれたのはファンの皆さんのおかげです！本当にありがとうございます！！』

「………」

………誰だコレ。
違う。Aちゃんはこんなに目をうるうるさせて笑う子じゃない。僕が転んだら蔑んだ目で見下ろしながら鼻で笑ってくる子だ。

『私、藤原 Aはリーダーとしてグループを引っ張れるように頑張ります！』

こんなの僕が知ってる幼馴染じゃない……！

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