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アナログカメラ [日吉*甘] ページ2

「何してるの?日吉くん」
屋上で1人、空を見上げているその人に声をかけた。名を呼ばれた彼は不機嫌そうにこちらを見る。
「見て分からないのか?空を見てるんだよ」
「それは分かってるよ。何を見てるのかなって」
日吉くんの横まで来て、顔を覗き込むように聞く。すると日吉くんは得意げな顔でニヤリと笑った。
「UFOだよ」
「ゆ、ゆーふぉー……?」
「なんだその顔は。何か文句でもあるのか?」
思わず唖然としてしまった私を見てまた不機嫌な顔に戻ってしまった日吉くん。私は慌てて言葉を付け加えた。
「そうじゃなくて!UFOって……未確認飛行物体だよね?見えるの?」
「それは分からない。だが、いると信じているからな。今日こそこれで撮ってやるんだよ」
日吉くんはポケットから使い切りカメラを取り出した。報道委員に配布されるものだったという認識だけど……。
「それ……趣味で使っちゃっていいの?」
「何言ってるんだ。UFOを撮ることが出来れば、確実に学校新聞に載るだろう。これも活動の一環だ」
「何か、分かるような……分からないような?」
苦笑いをする私を尻目に日吉くんはカメラを持ったまま、また空を見始めた。


「…………」
「…………」
それから長い時間、2人で空を見つめていたけれど、UFOが見える事はなくただ鳥が4,5羽空を横断するだけであった。
「……日吉、くん」
「今日は来なかったな。また挑戦だ」
「え?!また見に来るの?」
「何だ?別にいいだろ。それに、お前は来なくてもいいんだからな」
日吉くんは弄りながらカメラを弄り始めた。
「わ、私もまた一緒に見たいよ!」
「はぁ?今さっき引いてたじゃないか。なのにどうしてそう思う」
まるで茶化しているのかと、そう言いたげに日吉くんはイライラしながらこちらを見た。私は一呼吸置いてから口を開いた。
「……日吉くんと、一緒にいれる時間が出来るなら……それでいいの」
「っ……」
暫く沈黙が続く。
「おい、A」
「え?」
顔を上げた瞬間、シャッターの音が聞こえた。咄嗟の事に思わず目を瞑った。
「あ、閉じちまったな……目」
「き、急に何?」
困惑する私に、日吉くんはさっきみたいな得意げな顔で「ヘッ」と笑った。
「お前が可愛いことを言うからな。その時の写真を撮りたくなっただけだ」
少し、固まった。その後言葉の意味を理解して顔が熱くなる。
「ちょっ……からかわないでよ!」
「ちゃんと現像するからな、楽しみにしておけ」

彼は不思議で、いじわるだ。

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美紅(プロフ) - リクエスト良いですか? (2月11日 23時) (レス) id: 1aabd9141a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:通りすがりの人 | 作成日時:2016年7月19日 0時

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