～すの恋～ (ページ9)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:10,261 hit

. ページ9

youside

照「え、Aも？」

「うん」

何だか運命すら感じてしまった。

岩本くんも、ものすごく驚いていた。

照「そうなんだ！生まれた時間は？」

「時間？」

照「そうだよ、何時頃に生まれたの？」

正直よく覚えてはいなかったが、前にお母さんと話していて、何となく話題に上がったことがあった。

予定日が終わる寸前に、陣痛が来て、予定日ぴったりに、ぎりぎりに生まれてきたから、

この子は律儀で真面目な子なんだねぇと看護師さんが感心していたなんて言ってたっけ。

「23時くらいかなぁ。」

照「じゃあ、俺の方が兄貴だな」

そう言って岩本くんは見た目とは違って、目尻にクシャッと皺を寄せて優しい顔で微笑んだ。

でも、メガネを選ぶスピードは一向に緩まない。

私の試着はだいぶ遅れ、メガネが渋滞していた。

あわあわと、鏡を見ていると、突然、岩本くんが「それいいじゃん！！」

と言った。

「そ、そうかなぁ……」

私は自信なさげにそう返した。

照「今つけてるやつが1番いいよ。」

岩本くんは無邪気な笑顔を浮かべた。

「かわいい……」ﾎﾞｿｯ

照「ん？」

「いや、じゃあ、これにしようかな。」

照「そうしなよ」

「うん」

お礼を言おうとしたが、岩本くんは、私の方を見ていなかった。

照「ちょうど阿部、終わったみたい！」

と、

私が止める間もなく、岩本くんは手を振り、足早に去っていった。

岩本くん推薦のメガネを片手に、お礼を言い損ねてしまったと、果てしなく落ち込んだ。