放課後スピーチ ページ8
youside
お店の窓からは、終わりかけの桜並木がぼんやりと見えた。
よくよく目を凝らしてみると、枝々にピンク色の花びらが、わずかにしがみついている。
頑張っている春を、ちょっとだけ応援したくなった。
高校に入学して以降、私の視力は下がる一方だった。
2年に進級してすぐの視力検査では、案の定、新しいメガネを作るようにと言われた。
お母さんは「今日はあなたの誕生日だから、ちょうど良かったじゃない」と、プレゼントのつもりで、近くのメガネ屋さんに私を引っ張っていった。
母「他で買い物してるから、その間に決めておいてね〜」
長時間、鏡と格闘している私を見て、母親はそう言って、お店を出ていった。
鏡を見ていつも思う。
メガネは家と同じな気がする。
土台が悪いと良い家も建たない。
だから美人が羨ましい。
土台がしっかりしてるから、きっとどんなメガネでも似合うのだろう。
そんなことを考えながら唸っていると、「これなんかどう？」と突然声をかけられた。
私は慌てた。思わず店を飛び出したくなった。
同じクラスの岩本くんだった。
なぜ岩本くんがこんなところにいるのか、
照「阿部の付き添いなんだよね」
岩本くんは店の中でメガネを見ている、隣のクラスの阿部くんを指さした。
照「A、新しいの作るの？」
「う、うん。」
照「これなんかいいんじゃない？」
岩本くんは手に持っていたメガネを再度私に勧めた。
「あ、ありがとう。」
言われるがまま、かけてみる。
心の動揺がおさまらないので、鏡を覗き込んでも、似合ってるのか、似合ってないのか、正直さっぱり分からない。
照「なんでも甘い物食べていいって、阿部に言われてついてきたけど、自分の用事済ませてからねなんて言われたよ笑笑」
岩本くんはそう言って笑いながらも、次々と私にメガネを渡す。
私は流れ作業のように試着していく。
時折、私の顔を覗き込む、岩本くんの顔が眩しく、視線をそらさずにはいられなかった。
照「今日、俺の誕生日なのにさ」
試着中だったメガネのタグが、思いっきり揺れた。
「岩本くんも今日誕生日なの？」
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作者名：りおん | 作成日時：2021年1月22日 15時
