カ ケ ヒ キ . 【岩田剛典】

Thirty six ページ36

「ねぇ、お花見しない？」









昼休みになるや否や、美咲が何時ものように私のデスクにお弁当を持ってきてそう言った。









「お花見？」
「うん。ホラ、よくテレビでやってる川沿いの……有名なところあるじゃん？」









……ああ、あそこ。







蘇る思い出に蓋をすべく、
開けかけていたお弁当箱を閉じた。









「ねぇ、どう？」
「……ごめんけど違う人誘って」









そう断れば「えぇ、何でよ」なんてブーブー駄々をこねているが、そんなの聞く余裕なてなくて。









.











『付き合って、ください』









ああ、ダメだ。









『俺、これから仕事で忙しくなると思うけど、絶対大切にするから』









君のその顔が、声が。









『マジ？っ、よっしゃ！』









私の頭にへばりついて、離れないの。









(結局、好きなんだよなぁ)









今、私の頭の中を支配するのは、 サクラに負けない貴方のピンク色の頬。






だから、サクラは嫌いなんだ。





見るたびに思い出す貴方の顔は、
いつまで経っても輝いていて。









「A、どうしたの？」
「んーんっ、なんでもない！」









いつか、忘れられる日が来る。









そう思い続けて四年目。



気付かないうちに、

季節はまた一周巡ってきていたみたいだ。

Thirty seven→←Thirty five

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す