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俺は山姥切国広。この本丸の初期刀にして、かの美しき刀剣、山姥切長義の写しである。
因みに個体差かは分からないが演練で会う同位体よりも些かこの本丸の俺は図太い性格をしているらしい。加州談だ。
俺たちの本丸を簡単に言い表すなら、所謂ブラック本丸というやつだ。主は生まれつきだか後天的だかは置いといて、とにかくイカレた女だった。欲しい刀剣が手に入らなければ目に入った者に八つ当たるし、練度が上がらないのはすぐ折ったり疲労度を溜めたりしているからなのにそれを聞き入れない。
ただ霊力だけはある審神者だったからなのか、この本丸に顕現する俺たちは、同位体に限り記憶を引き継いでいた。原理はわからないが、霊剣達によると、魂のようなものがここに引き止められて、それをそのまま新たな器に閉じ込められるらしい。知りたくもなかったし、何度も折られているような短刀連中を哀れに思った。
さらに言うと、その有り余る霊力のおかげで、俺たちはいつも形だけは立派な本丸だった。傷も手入れ部屋にブチ込む前に治っている。完璧な悪循環ブラック本丸の爆誕である。
さて、俺がこの本丸について語ったのには訳がある。
今日は時の政府から、審神者見習いなる者が派遣されるそうだ。当人の近侍と、政府の刀を付き添いとして。正直審神者見習いとか空想上の者と思っていたため驚いている。
ともあれ抜き打ちチェックのようなものだろう。
前にやってきた監査官をも掻い潜れてしまったこの本丸だ。俺たちが真の意味で救われる日はきっとこない。
俺が他の場所で山姥切国広として顕現されたとしても、この魂は既にどうしようもないほどに毒されていて、それは浄化するとかの意味ではなくただの比喩でしかないのだから。
他の皆も同様で、主をイカレ女と思いつつ、恨みつつ憎みつつ、見放す日もきっと来ない。
そうこうしていると例の見習い一派がやってきた。
「時の政府から派遣された。俺はこの審神者見習いの付き添いだよ。以前も監査官としてここに来ているわけだが……偽物くんは相変わらず腹の立つ姿をしているね。」
俺の本科、山姥切長義は以前、聚楽第の任務で一緒になったことがある。が、主が主な為に優評価を得ることはできなかった。その時にここが最悪の職場だと気づきそうなものだが、ポンコツなのか鈍いのか高飛車相まって見下し過ぎていただけなのかは定かではない。ちなみにこの考えがバレると俺は目の前の銀髪美人のゴリラみたいな握力で折られる。嫌だ。
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作者名:からあげ。 | 作成日時:2022年12月25日 22時