君が欲しい (ページ4)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:5,878 hit

３ページ4

【said 織山尚大】

『あのシーン、すっごくカッコいいよね！』

黒田「わかる！主人公がね、すごいよね！」

きゃっきゃとはしゃぐ真菜と、黒ちゃん。

羨ましい……そう素直に言えない自分が、腹立たしい。

中学で会ってから、なんとなく近くにいた。

いつの間にか、恋愛感情が芽生えたわけだけど。

“好き”って自覚した瞬間、今までどうやって接してたのかわからなくなった。

それで、この状況。

現に、俺は真菜にとって、嫌われ者になってしまった。

だからって、真菜が俺を突き放さないのは、優しいからなんだろうけど。

しかも、真菜の好きな人が、俺の親友でもある、光成だったとは。

俺って、どこまでついてないんだろうな。

まあ、全部自業自得だけど。

叶う見込み……あるなら、教えて欲しいくらいだ。

全くもって、突破口が見えない。

俺……こんなんで、どうなるんだろうな。

はぁ……。せめて、優しく接せればいいんだけど。

光成は多分、真菜のことが好き。

でも、それだけじゃなくて、真菜を好きな人間は山程。

俺は、光成と真菜の架け橋になるべきか……。

何度も思ったけど、実行できない俺。

好きな人が他の人と付き合う手助けをする奴がいたら、教えてほしい。

織山「いい加減、ケリつけるべきだよな……」

呟いた言葉は誰にも届かず、消えた。

いろんな声が飛び交う教室に紛れた、俺の弱々しい一言。

アホ、マヌケ。

今まで相談してきた誰からも言われた。

わかってるよ、そんなこと。

真菜に振り向いてもらうには、光成みたいに優しくするしかない。

でも、それができないんだよ。

真菜を前にすると、素じゃない自分しか出てこない。

女子がキュンとするらしい、「可愛い」とか「似合う」とかも言えないし。

ましてや、頭撫でたりするのなんて、論外。

光成は、普通にやるけど。

こういう所が、真菜に振り向いてもらえない要因なんだよな……。

もっと、“大人”で、カッコいい自分になりたい。

でないと、一生片想いで終わりそうだ。

失恋……とかいうのも、経験すんのかな。

実感湧かねーや。

だからといって、俺と真菜が付き合ってる未来も、思い描けない。

これからの俺が、少しでも成長することを祈る。

未来の俺……もっと優しくなれよ！

そんなことしか言えない俺は、本当に情けない奴だよな。