wonderful×3 (vol.9) (ページ45)

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黒side

黒「もう一本ちょうだい」

カウンターに空いたビール瓶を乗せると間髪入れずに次のがやってくる

あー、夕方のビールはまわる～

『あれ、珍しい。今日は嫁とセットやないんか？』

声を掛けられ顔を上げると、馴染みのご近所さん

黒「たまにはね、一人で飲みたい事もあるんです」

『なんや浮気でもされたんか？』

『バカね、ほら、明日娘さんが出発しちゃうから寂しさを紛らわせてるのよ』と、おかみさん

『ああ、まるちゃん。そういや留学するとか言ってたか？』

黒「留学ねぇ…」

『？？』

ほんまは、馬の骨に掻っ攫われるんですよ。って言えたら、愚痴だって聞いてもらえるし、気も紛れるんやろか？

黒「あーあぁ」

『でかいため息やなぁ』

そら、ため息も出るわいな。…大事に大事に育ててきた娘やのに、まさかこんなに早く手元から出さなあかんくなるなんて

黒「うっ……(涙)」

『泣いてしもたで！』

『そりゃ、悲しいわよ、ねえ？』

そっと差し出されたおしぼりと温かいお茶…、こんな時ってホンマ人の優しさがしみるな

『まぁ、あれだな。まるちゃんて言ったら近所でも評判の娘さんだったもんな』

『そうよ。小さい頃から明るくって元気で、良い子だったもん。それにお勉強も出来たんでしょう？』

黒「…いやいやいや、それ程でも。///」

『何を謙遜する事があるの。素敵な娘さんになったってもっぱらの噂よ？それを外に出すんだから、寂しくって当然よ』

『…なんや話聞いてたら俺まで切なくなってきたわ。留学でこんな寂しなるんやろ？俺、娘嫁に出す、言うたらどないなってしまうんやろ？』

嫁…

こっちは嫁どころか、子供までこさえられたけどね///

黒「うっ…」

『泣け泣け。家でやと泣けんやろ？俺が付き合ったるから好きなだけ泣いたらええねん』

黒「…ありがとう。ほんま、ありがとうな」

あんまり呑んでいらん事までしゃべったらあかんけど、ほどほどにお互いの娘のこと話しながら思い出に浸ってたら

「おじゃましまーす♡」

場違いなくらい底抜けに明るい声

…その声は

黒「ああ、やっぱり」

振り返ったら丸子がいた