やすくんと狛犬ちゃん (ページ23)

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1 おねだりは誰のため？ページ23

やすくんちに来てしばらく経ったその日、あたしたちは初めてケンカした。

だってね…

ひどいんだよ、やすくん！！(涙)

今日は朝から車に乗せてくれて「ええトコ連れてったる」って言うからウキウキしてたのに、

ココ病院じゃーん！

しかも注射されたー！！！

ふぇーーん！！(涙)

青「ココの先生イケメンやねんで？だから我慢できるよなぁ？」

って、

出来ませんから！！

初めは何が起こるのかわからなかったけど、あたしを囲むみんなが「痛くないよ痛くないよ」って言うんだもん。

そんなの痛いに決まってんじゃん、ね！

しかも、実際、痛かったし！(涙)

もう、なんにも信じらんない！

あたしは家に帰った途端に水槽が置いてある棚の陰に駆けて行き、そこからはイジケて隠れんぼ

青「そない拗ねなってぇ。ほら、出といでー。遊ぼうやぁ」

ぷん！イヤです！！

あたし、怒ってんだからねぇ！

青「もう、ゴメンてぇ」

『キャン！キャ、キャン！！』

思いっきり吠えると、水槽の金魚さんたちがビックリしたのかパッとシッポを翻してぴちゃんと跳ねた。

青「もう、おてんば娘！」

やすくんは腹這いになって腕を伸ばすと、あたしがいる隙間に手を入れ、引っ張り出そうとするけどかすりもしない。

へへん、べろべろばぁー！だ

『キャン、キャン！！』

青「そない怒ったかてしゃーないやろ？病気せんための注射やねんで？」

…え、

そうなの？

青「おかあちゃんみたいに石やないねんから、風邪もひくしお腹も壊すんやで？そんなんで病気になってバイバイするんイヤやろ？」

それは、その、…イヤです。

『くぅーん…』

青「まぁ、ええわ。痛い思いさせたんは確かやしな。それはゴメン。謝る」

『くぅーん、くぅーん』

青「でも、いつまでもそんなトコ居ってもつまらんよ？気が向いたらでええから出といでよ？」

やすくんは、立ち上がるとお腹に付いた埃をポンポンと払いながらソファーに座ってメールチェックを始めた

…うーん。

注射は確かに痛かった

やすくんヒドイ！と思った。

けど、

痛い注射はあたしのため。

…んー、出て行ってごめんなさい言おうかな

でも、照れ臭いなぁ…。

どうしたもんかと考えあぐねた結果、あたしはそこに寝そべり、しばらくはココからやすくんを眺めることにした