8UPPERSのセカイ（eight） (ページ27)

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登って来た階段のゴールにある鳥居の前で回れ右。

『うわぁー、本当に見晴らしサイコー。綺麗な景色…』

眼下に広がる細々とした街並みと、まるでプラレールの様に複雑に交差する線路を眺めてめっちゃ興奮しとる

「そんなんより、先お参りやろっ」

『あ、ごめんなさい(汗)』

先にお賽銭を投げて手を合わせてたら、ちょいちょいと肩を叩かれて

『ところでここの神様はなんのご利益があるんですか？』

「目、や。」

『目？』

「そう。お前も俺が貸したった目が早よ治る様に一心不乱に頼み込め」

『あー、そういう事か。…わかりました♪』

パンパン！！

『早く借り物の目が治りますよーに！』

「アホか！心の中で唱えろやっ」

『だって、誰も居ないし、この方が神様に早く届きそうだし』

「…ド天然か///」

はぁ、それにしたって俺も疲れた。社務所の前のベンチに腰掛けてちょっと休憩や。

『あー、絵馬がある』

「そら神社やからな」

『私記念に書いて帰ろう』

俺の前に座ると、躊躇いもなく早速書き出した。

『はい、出来上がり♪見てください』

俺が見やすい様に回してから差し出された絵馬には

【目が早く治りますようにリョウ】

って書いてある。

「…シンプルやな」

『そうですか？…あ、ちょっと返してください』

「？？」

またマジックの蓋を開けると何かを書き足しとる

「あんまり欲張るんもあかんのと違うか？」

『違いますよ、ほら』

「ん？」

【目が早く治りますようにリョウ&リョウ】

「………」

『あの…、あそこで受診してたってことは、目が悪いって事ですよね？だから、リョウさんも、早く良くなれって…』

しまった、忘れてた。

本名聞かれたから誤魔化さんとあかんかったのに、これじゃあ何にもならんやん

『あの、違うんですか？』

「あ、いや、それはそうやねんけど…」

俺の名前は忘れろ。

今迄にも何度か失敗して、その度に言い放って来た言葉。

なのに、今日はそれが言えなかった。